仕事納め
今日もショートです。よろしくお願いします。
「これで最後だっ!」
僕の大上段から振り下ろしたハンマーはゴブリン王の頭を受けた盾ごとへし潰す。
動かなくなった事を確認して収納にしまう。面倒くさいので、このままギルドに押し付ける。
「あーあ、最後はザップに持っていかれたわね」
そう言うが、マイは残念そうではない。
「譲ってくれたんだろ」
「あ、わかった?」
「うすうす」
「やっぱり最後はザップに決めて貰わないとね、今年最後だし」
「ご主人様ーっ、こっちも終わりましたーっ」
ドラゴン娘が駆けてくる。幼女導師も一緒だ。
「待って下さい、アンさん、とばしすぎですよ、余り私から離れたら魔法、きれますよ」
幼女導師ジブルは、肩で息をしている。コイツは只の運動不足だろう。最近少し顔が丸くなった気がする。ジブルが強力な耐寒の魔法をかけているので、アンはなんと魔法のワンピースだけだ。季節感全く無視だ。いつもは半纏なのに極端すぎるだろ。
「ジブル、デスクワークばっかじゃなく、体動かさんと太るぞ」
「ザップにだけは言われたくないわね。出てるわよ腹」
げげっ、ブーメランだ。
「おいおい、冬だからしょうがないだろ。冬に痩せると寒い。暖かくなったら痩せるさ。簡単だ」
「多分、口だけね、そう言う事言ってる人ってずっとぽっちゃりよね」
何故かマイは太らない。同じ飯食ってる筈なのに量も。
「そうですね、ご主人様は単に食べ過ぎですよ」
「お前にだけは言われたくないわ!」
アンも太らない。僕の倍はいつも食ってるのに。
今日は仕事納めにゴブリンレギオンの討伐依頼を引き受けた。全員思い思いに蹂躙し、溜飲を下げる事が出来た。『剣の王』、『槍王』、『自家製メテオストライク』など大盤振る舞いで、辺りはもう地獄絵図だ。しばらく収納攻撃の仕込みで暇を潰せそうだ。
「それにしても、ゴブリンって居なくならないわね。あたし達がこんなに狩りまくったら絶滅しそうなものなのに」
マイの言うとおりだ。本当になんで全滅しないのだろう。
「今日もゲートを見つけて壊したわ」
ジブルが答える。ゲート? あの魔物がワラワラ出てくる奴か?
「暗黒魔法に『地獄門召喚』ってものがあるの。だからこれは人災よ。誰かがゲートを召喚したの。暗黒魔法を使う者が居なくならない限り、ゴブリンとかの魔物が居なくなる事はないわ」
ジブルの言葉になんかしんみりしてしまう。年末だからかな……
「人間を苦しめる魔物を呼び出す人間がいる。けど、それを倒して人間を守る人間がいる。それでいいんじゃないですか?」
アンの言葉に僕は頷く。僕達は出来る事をしていくだけだ。