第六十四話 荷物持ち街に入る
馬車は道なりに進み、車両用の通用門に並ぶ。貴人用の通用門もあるがそれを使うには事前の許可が必要らしい。
荷馬車は街に入る時にその積荷に応じた通行料を払わないといけないので、一台一台しっかり荷物を検分される。僕達の前に十数台待ってるからかなりの時間がかかると思われる。
女魔法使いのフェルトは拘束を解かれている。ポルトの逃げないだろうという緩い判断によるものだ。相変わらず何も話さない。
「寝るから、なんかあったら起こしてくれ」
神官のババと御者のガイル以外はいつの間にか寝てたので、言付けしてしばらく寝る事にした。
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「おい、起きろ」
なんかでコツコツつつかれて目を覚ます。衛兵が槍の石突きで僕の頭を小突いている。痛くは無いけど不愉快だ。
「ザップ、ポルトの身分証で通行許可はおりたんだけど、ザップがご禁制の蛮族の戦闘奴隷じゃないかって事で疑われてるのよ」
マイがキラキラした目で僕を見ている。耳もピクピクしてる。僕の受難を楽しんでやがるな。その横でアンも僕を注視している。
「蛮族の戦闘奴隷?」
目を擦って衛兵を見る。
「お、意外と流暢に喋るな、おいお前、名前を言ってみろ」
「ん、俺の名前は、ザップ・グッドフェローだ」
「名前は蛮族っぽいし、言葉は滑舌が悪くて聞き取りにくいし微妙ですね」
「余計なお世話だ!」
失礼な奴だな、そんなに僕は滑舌わるいのか?
「あ、今の話し方いいですね、それでしたら文明人っぽいですよ。まあ王族の関係者の馬車なので通しますけど、これはそのぼろ布を脱いで頭にずた袋を被せるか、全身見えないようにずだ袋に入れるかしないとここで置いていってもらいますよ、このまま持っていったら道々で検問にあいますよ」
「お前、人を物扱いするなよ」
「あ、すみません、つい奴隷と勘違いしてしまいますね」
「もういいよ奴隷で……」
「すまんなザップ、奴隷なら別に金がいる。今はその金がないんだ。衛兵、頭に被るずだ袋持ってきてくれ」
ポルトが口角を緩めながら言う。笑い堪えてやがるな。
「まて、俺はこの皮しか着てない。これを脱いだらまた別の意味で検問にひっかかるんじゃないか?」
さすがに裸に頭にずだ袋は高レベルの変態にしか見えないだろう。僕が衛兵だったら問答無用で豚箱に放り込む。それは勘弁してほしい。
「手間がかかる奴だな、衛兵、でかい袋もってきてくれ、それとガイル、城に行く前に屋敷に寄るぞ」
斯くして僕は袋詰めにされて久しぶりの街に入る事になった。なんか納得いかない。