荷物持ち仲間(前編)
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『収納スキル持ち求む。魔道具の運搬。報酬は出来高制。馬車に揺られた後、湿原を散策する簡単なお仕事です』
なんか胡散臭い貼り紙を凝視する。本当に簡単なお仕事なら、わざわざそう書かないだろう。
僕は自分が『ひも』で無い事を証明するために、王都の冒険者ギルドに来ている。最近、ヒキニートだったドラゴン娘でさえお金を稼いでいる。僕が受けるのは最高額依頼。
出来高制と言うのがいい。条件次第ではこれが最高額になるだろう。僕の収納スキルはべらぼうだ。なんか胡散臭い依頼ではあるが、ギルドを通してあるから、そこまで妙なものを運ぶ訳では無いだろう。魔道具って書いてあるしな。僕は依頼を受ける事にして、詳細の確認に向かった。
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ゴトン、ゴトン、ギー、ギー、バキバキッ!
王都のはずれの倉庫でブツを収納に入れたあと、ぼろっちい馬車に揺られている。めっちゃガタガタ揺れるし、さっき明らかにどっかぶっ壊れたよな?
僕たちはスキル容量を隠すために、倉庫で1人1人ブツを入れていった。ブツは人1人くらいの大きさの袋で、中の魔道具が何かは教えて貰ってない。ブツ1つにつき、運搬料金は銀貨1枚。僕は最後に倉庫に入って残ったブツを全て収納に入れた。300近くあったから、しめて大金貨3枚近くになる。ボロい商売だ。これで余裕ある生活を送れる。半分はパーティー共有資金に入れる予定だ。これで誰も僕の事を『ひも』呼ばわりしないだろう。かなり難易度が高い討伐依頼でも数日でこんなに稼げない。
僕は周りを見渡す。10人程居るが、なんて言うか、マイナスのオーラ出しまくっている奴ばかりだ。いる人間はガリガリかぽっちゃりのどちらかでビジュアル的に最低だ。まるで、運ばれていく奴隷か犯罪者みたいだ。少し前までは、僕もこんな感じだったのか……
「お前は幾つ入れた?」
「3つだ」
「すげーな、俺なんて1つだぜ。飯代にしかならねぇ」
僕の隣にすわっているガリガリで前歯のないおっさんが、隣のぽっちゃりの兄ちゃんに話しかけている。おっさん、1個しか収納に入らなかったのか? おいおい、稼げなさすぎだろう。
「兄ちゃん、お前は幾ついれたんだ?」
おっさんは僕に話しかけてくる。んー、なんて答えようか?
「まあ、そこそこだな」
「そこそこかぁ、じゃあ3つ4ついけるのか、いいなぁ、それなら稼げるな。そりゃ、いい服着てるわけだ」
言われて気付くが、みんな着ている服はボロボロだ。そのあとおっさんはほぼ全員に収納数を聞くが、多い人で5つが最高だった。どうでもいいが、収納数が多いほどぽっちゃりで、収納の大きさと脂肪が比例している事が解った。その論理だと、僕は力士並みになるな……
そんなこんなで、まるで通夜のような雰囲気で、僕らはぼろ馬車に揺られていった。