自重無し (終)
加減を廃した一撃を放つ。大上段に振り上げたハンマーを振り下ろす。けど、狙いは大剣。こんなに素晴らしい奴を殺すのはもったいない。
ガキーーーン!
重い音と共に、王の大剣はへし折れる。王は力なく片膝をつく。
「マサカ、ニンゲンニ、ツカウコトニナルトワ……」
王の体が爆ぜるかのように膨張していく。辺りのリザードマン達は蜘蛛の子を散らすように逃げ出す。僕は距離をとり、王を眺める。攻撃しようかと思ったが、なんかしてくれるようなので、せっかくなので待つ事にした。
「グオオオオオオオーン!」
目の前には、ドラゴンが現れた。うちのアンと比べたらかなり小振りだ。リザードマンの王だったものは、天に向け叫ぶ。いい感じに威圧効果のある奴だ。聞いたリザードマン達がバタバタと倒れていく。こいつは負けられないな。
「うおおおおおおーーーーっ!」
僕は黒いハンマー、『瘴気の金槌』を収納から出して吼える。その力を最大限に解放し、僕の体から黒い靄、瘴気が止めどなく溢れる。今回は自重無しだ。辺り一面が瘴気に覆われ、リザードマン達がバタバタと倒れていく。多分僕が気絶させた数の方が多い。勝ったな。
けど、素晴らしい。王はまだ戦ってくれるのか。しかもこんな隠し球をもってたのか。
「ゴオオオオオオオーッ!」
ドラゴンは口を開け、その中に炎が渦巻く。おっ、さらに炎をプレゼントしてくれるのか。なんて有難いんだ。
ドラゴンの口から爆炎が僕に放たれる。有難く余すことなく収納にいただく。今度のバーベキューで活用させてもらおう。けど、やはりアンに比べたらしょぼいな。
今度は僕のターンだ。
「うおおおおおおーーーーっ!」
僕はハンマーを手に駆け出す。そして跳び上がり渾身の一撃を放つ。
ドゴムッ!
ハンマーはドラゴンの頭にのめり込む。いかん、テンション上がりすぎてやり過ぎた。ドラゴンの体は急速に萎んでいく。急いでエリクサーをかける。間に合ったか? 死んでないよな? なんかデジャヴだな。
「コロセ……」
良かった。生きてる。王は横臥したまま首だけをこちらに向ける。
「殺すか、ばーか。もっと鍛えて出直してこい」
僕は王に背を向ける。
「王ハ、ヤブレタ。アタラシイ王ハ、『ザップ』ダーッ!」
後ろから声がする。
「えっ?」
王は何言ってるんだ?
「ザップ!」
「ザップ!」
「「「ザップ! ザップ! ザップ」」」
リザードマンのシュプレヒコールが辺りを揺るがす。
かくして、偵察のはずが、リザードマンの王国を制圧してしまった。ギルドの報酬貰えるのかな? お金ほしいのに?