自重無し (中)
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「これだな!」
僕が王都の冒険者ギルドで選んだ依頼は、その中で破格に報酬がいいもの、『南西の湿地の先のリザードマン領の武装状態の調査報告』。
王都の遙か南西部は湿地帯が広がっていて、その先にはリザードマンの王国がある。そこを平定しようにも湿地帯が邪魔していて、王国建国以降そこは手つかずの状態だった。最近リザードマンの王が代わったらしく、圧政を引き軍を再編し王国に弓引く準備を整えているらしいけど、詳細が不明だそうだ。調べようにも彼の地はリザードマンの版図、住んでるのはリザードマンのみで、交流があるのは少数の商人のみ。顔が通ってない人間が行こうものならすぐに摑まってしまう。それで、高額な調査依頼が出されていた訳だ。
僕は何も考えず、調査に向かった訳だが、当然まずはリザードマンの衛兵にからまれ、撃退。騎士来る、撃退。そして、わらしべ長者みたくどんどん事が大きくなり、気がついたら、軍と対峙していた訳だ。
まあ、武装状態の調査報告だからやってる事は間違って無いはずだ。軍の全容を把握出来そうだし、ぶっ飛ばしたら駄目だよって書いて無かったしな。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「マサカ、タッタ1匹ノニンゲン二、ココマデヤラレルトハナ……」
なんか、王冠のようなものを被った巨躯のリザードマンが波をかき分けるように逃げるリザードマンの中を進んで来た。
そして大剣を手に僕と対峙する。おお、もしかしてリザードマンの王か? 僕に一騎打ちを望む気か?
その心意気よし!
大量破壊攻撃を止めて、愛用のハンマーを取り出し、手加減して打ちかかる。もし本気で叩いて一撃で終わったら面白くない。王は大剣で防ぐがたたらを踏む。
ほぅ、さすがだな。リザードマンの王は最強の戦士がなると言うのは本当らしいな。王は踏みとどまると反撃してくる。唐竹割りから、なぎ払いから逆袈裟。大剣を回転させながらの連撃。いい太刀筋だ。けど、すべて紙一重でかわす。
少し遊んでやるか。
王の力に合わせた攻撃を放つ。加減しているとは言え、久々に楽しい戦いだ。身内以外で、これまでの猛者は記憶にない。数合、数十合。僕の攻撃を王は全て受けるかかわし、王の攻撃を僕も全て受けるかかわす。
気がつくと、辺りの全てのリザードマンは僕たちの戦いに見入っている。
「ブリンガ!」
「ブリンガ!」
「「「ブリンガ!」」」
王の攻撃の度にリザードマン達から声が飛ぶ。王の名前なのだろう。
王と僕は激しく打ち合いを続ける。
「ハハッ、サイコーだなぁ」
ついつい声が漏れてしまう。ここまで頑張ってくれる奴はそうそういない。思わず相好を崩す。
「コッ、コレガ、マオウナノカッ……」
少しづつ、王の動きが鈍ってくる。しょうが無い。そろそろ終わりにするか。