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 パーティー


「ったく。なんで俺がこんな格好を……」


 今、僕はタキシードという服を装備している。黒い蝶ネクタイにエナメルの靴。何だかなー、とっても窮屈だ。しかも髪には整髪料をつけられてベットリと後に撫でつけられた。鏡を見ると自分じゃないみたいだ。


 今、僕らはこの国の王様のポルトの屋敷にいる。奴に呼ばれたパーティーに出席するために身だしなみを整えさせられているところだ。大事なパーティーだから正装を強要されている。正直、僕の本当の正装の裸に腰巻きだけの猿人間スタイルで乱入してやりたいものである。


「ザップー、文句言わないの。一応、王様からの招待でしょ」


 マイの格好は真っ赤なイブニングドレスというやつだ。薄く化粧していて、正直、目を合わせられないほど可愛い。ホルターネックという首に輪っかのような布をかけて、背中ががっぽりと空いたドレスを着ている。ちなみにホルターネックという言葉はさっき初めて知った。背中が空いてるって事はブラジャー的なものはどうなってるのか考えてしまい、つい胸元に目がいってしまう。悲しいけど男の性だ。うん、なんも下に着てない訳ないよね、アンじゃあるまいし。


「やっぱり、すこし、肌、出しすぎかなぁ?」


 マイはくるっと僕に背中を向ける。やべっ、チラチラ見すぎたか? けど、僕がやましい事考えてたんじゃなく、露出を心配してたと勘違いしてくれたのか? 確かに背中がっぽりは凄まじい。マイの背中には傷1つなく、すべすべしてそうだ。おできブツブツの僕の背中とは大違いだ。マイの背中をガン見する奴がいたら、そいつに穴が空くほどガン垂れる自信がある。


「やっぱり、ストールかけてこっ。寒いしね」


 マイの肩が布で覆われる。


「ストールって何だ? たまに聞くけど。それってマフラーと違うのか?」


「それは、私がお答えしましょう」


 見た目幼女のくせに生意気にドレスを纏った導師ジブルが答える。なんと珍しく白の服を着ている。意外にというか、かなり胸があるのだが、それに目を向けたら人として終わる。マイとジブルにいじりたおされる。


「マフラーはぶ厚くて、ストールは薄いのよ」


 ジブルは自分のストールをヒラヒラする。なんかムカつく。


「アン様、そちらは置いていって下さい」


「いやー、それだけは勘弁してーっ!」


 アンがメイドに追っかけられて部屋に駆け込んでくる。僕たちは着替え終えてアン待ちだった。

 アンは緑のドレスの上に愛用の半纏はんてんを羽織っていて、それをメイドさんが引っ張っている。


「うん、斬新でいいんじゃないか? どうせポルトのパーティーだし、俺たちは冒険者だ冒険しないとな。もしかしたら、王都で半纏はんてんが流行るかもしれないしな」


「何言ってるのよ、ザップ、アンちゃんも今日だけはちゃんとして」


 マイの放った収納のポータルがアンの半纏を回収する。ついでに赤のギンガムチェックの角当ても回収された。そしてマイはアンにフワッとストールをかけてやった。


「ううっ、寒いですぅ」


 ドラゴン娘は涙目だ。


「アンちゃん、パーティー会場は暖かいからそれまでは我慢して。ファッションには我慢がつきものなのよ」


「はいー……」


 マイにアンは素直に従う。ん、いつもだったらもっとごねるのにな?

 角は生えているが、それを除けばどっからどう見ても貴族の令嬢にしか見えないアンがいる。なんか変な感じだ。


 僕たちは屋敷を出て、暗くなりかけた中、馬車で城へと向かう。


 けど、正直不愉快だ。このパーティーとかいう固苦しいやつは心底苦手だ。まず服が窮屈だ。僕の体に合わせて作ってはあるのだが、思いっきり力をいれたら背中が破れて蝉の脱皮みたいになりそうだ。高い服らしいのでしないけど。

 それになんか貴族的な方々がひっきりなしに挨拶的なものをかまして来る。僕は初対面の人と話すのは苦手だ。しかも来るのはおっさんばっかで、綺麗な女性は遠巻きで僕には軽い挨拶くらいだ。モテない男はつらいものだ。


 なんか腹立ってきた。


 全てをブチ壊してやる!


 魔王と呼ばれている雄姿を人々の脳裏に焼き付けてやる。そうだな、会場に入るなり、猿人間スタイルになって、適当に叫んで逃げる。フフッ、これでもう二度とこの国のパーティーに呼ばれる事は無くなるだろう!


 そうこうしているうちに城につき、使用人に会場まで案内される。


 扉を開けると何故か薄暗い。何かのサプライズでもあるのか?

 よしよし、いっぱいいやがるな貴族共め恐怖に叩き落としてやる。特に婦女子。一般の貴族の婦女子は男の半裸など見たことないだろう。目の毒になりまくってやる!


 フッ。


 僕が部屋に入った途端明かりが消える。ん、停電か? 渡りに船だ。タキシードを収納にしまい、ミノタウロスの腰巻きを腰と首に纏い、ハンマーを出す。少し寒いがファッションには我慢が必要だ。僕はハンマーを天に突き上げ、叫ぶ準備をする。明かりがついたら、婦女子は僕を見て恐怖に泣き崩れる事だろう。フフッ、魔王降臨!


 ぱあっ


 さっきよりも煌々と明かりがつく。のみならず、幾条もの光が僕を照らしている。


 な、なんだ?


「「「「ザップ、お誕生日おめでとう!」」」」

  

 僕の目の前には巨大なケーキが出現していて、マイが僕に花束を差し出す。ハンマーをしまい、訳も解らず受け取る。

 辺りを見渡すと、ポルトを含め、会場みんなは僕の知った顔ばかり……


「ティタから聞いたのよ。今日、ザップ、お誕生日でしょ」

 

 あ、今日は12月11日、僕の誕生日だ……


 ここ数年は忘れ去っていた。


 じゃ、このパーティーは、僕の誕生日パーティー?


 こんなに沢山の人が僕のために。こんな沢山の人に祝ってもらったのは、生まれて初めてだ。


 こらえきれず、溢れ出る涙で、僕の視界は歪んでいった。

 

 と言うわけで、今日で1年。『最強の荷物持ち』の誕生日です。読んでいただいた皆様、いままでありがとうございます。これからも頑張ります。


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 とっても執筆の励みになりますので、よろしくお願いします。

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