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 エル・キャピタン


「頼む、家の娘を助けてくれ」


 王都のギルドで依頼を受けようとした僕にチョビ髭のおっさんが抱きついてきた。ブヨブヨの腹が当たって心底不愉快だ。


「あ、あなたは、マーレー伯爵?」


「おお、ジブル君じゃないか」


 おっさんはジブルの知り合いらしい。面倒くさいな。


「どうされたんですか?」


 おいおい、話を進めるな。絶対厄介事だろ。


「それがだな…………」


 おっさん言うには、おっさんの娘はロッククライミングにはまっていて、王都西にある『エル・キャピタン』という巨岩をパートナーと2人で素手で登ってたそうだ。それが運悪くその巨岩の1部が崩落し、上にも下にも進めない状態になって岩壁の中腹に取り残されているそうだ。しかも相方は負傷してて動けないという。それを助けて下さいとの事だ。しょうがないな。


 王都を出てアンにドラゴンに変身して貰い現場に急行する。


『エル・キャピタン』。誰がその名をつけたかわからないが、何処かの国の言葉で『岩の族長』という意味だそうだ。噂では異世界から来た者が名づけたらしい。山脈の絶景の手前にある巨岩、下は針葉樹の森に囲まれている。キャンプ村の近くでアンに人に戻って貰い、そこに寄り案内を雇い、僕たちは登攀ポイントに向かう。ちなみに山すそで冷えるので、アンはキャンプ村の焚き火の前に置いて来た。


 下から巨岩を眺める。遙か上の方に人影が見える。岩の色が変わっている所が崩落した所だろう。人影の上下が崩落している。しかも人影がある所は抉れるように窪んだ所だ。上に登ってロープを垂らしたとしても届かなさそうだ。どうするか?


「風が強すぎるわ」


 飛行魔法で上昇していったジブルは遠くに流されて、今帰ってきた。

 残る方法は、収納スキルのポータルを空中に固定してそれに手足をかけて登って行くしかないか。そして、取り残されている2人を僕の体に縛り付けて降りてくる。


「もし、何かあったら頼む」


 僕は岩壁を伝うようにポータルを握り踏みしめ登り始める。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「だ、大丈夫ですか?」


 なんかそんな気がしていた。僕の前には筋骨隆々のおっさんみたいな女性? が2人いる。やべぇ、1人は片手で岩肌に摑まって、なんかを食べている。もう1人は怪我してると言う話だったが、軽症で岩の突き出た所で休んでいる。


「問題ない!」


 女性? の片方が答える。なんでマッスルな人って声大きいんだろう。


「あの、取り残されているって……」


「む、崩落が収まるのを待ってるだけだ。そろそろ出発する。それより、お前、それは魔法か何かか? 山に対して失礼だろ。今すぐ岩に掴まれ」


「はぁ……」


 勢いに呑まれて、僕も岩肌に捕まる。


「お前にもロッククライミングの楽しさを教えてやる!」


 確かにロッククライミングは楽しかった。頂上まで登り3日後に下山したが、当然マイ達は帰っていた。


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