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 紙が無い! (前編)


「うおおおおおーっ!」


 僕は魂の叫びを漏らしながらひた走る。


 ぐるるっ!

 

 いかん! 下腹部の痛みがます。これはこのまま走っていたらやっちまう流れだ。僕は痛みをこらえながらお尻に力を入れて歩く。太股が固定されて、なんか内股のナヨナヨした感じの歩き方になる。けど、間に合った。変な歩き方で進んだ所は誰にも見られて無い。

 

「パーフェクト! ミッション、コンプリート!」


 僕はトイレに入り、自分の健闘を褒め讃える。やべー、お尻と手と足の裏が汗でヌルヌルだ。心が温かさに包まれた。


 何を食べても滅多にお腹を壊さないのだが、何が悪かったのだろうか? 迷宮生活していた頃は、腹痛がデフォルトだったけど、最近はご無沙汰していた。やっぱり原因はさっき食べた食事だろう。

 今より少し前、この国の王であるポルトに街の高級レストランに招待され食事を奢って貰った。先日、魔道都市に大量の食料を運んで代わりに貴重な魔道具を持ち帰る依頼を達成させた慰労という事だった。そこでは最高級肉と最高級ワインを振る舞ってもらった。とても美味かったのだが、なんて言うか最高級肉は脂が多く少し重くてもたれた。ワインの方は何十年寝かせたかうんたらで、正直味がどぎつくて好みじゃなかった。

 間違いなく原因はソレだろう。滅多に食べない高級なものを体が拒絶したのだろう。けど、腐ったものは大丈夫なのに、高級なものでお腹を壊す僕ってどうなんだろう……


 窮地を脱して、気付く。


『紙が無い!』


 心の中で絶叫する。何たる不覚。僕はトイレに入る時は必ず紙があるか確認する。因みにトイレで使うロールになったトイレットペーパーは魔道都市の特産品だ。だいたい10ロールで銅貨二枚。正直、適した葉っぱを集めるよりも安上がりなので、たいていの所では使っている。魔道都市には大地の属性魔法で紙を作る魔道士が沢山いるのと、紙を作る魔道具があるお陰で紙は主要産物で、その廃品や失敗作で大量のトイレットペーパーを作っているそうだ。

 トイレの棚にだいたい予備が置いてあるのだが運悪く無く、僕も収納に幾つかしまっているのだが、最近はフィールドクエストばっかり受けてたので使いきってしまい、補充を忘れていた。


「誰だ、補充してないのは……」


 マイ、ジブルはこういう所はきちんとしているので、頭に思い浮かぶのはドラゴン娘のアン。けど、あいつは滅多にトイレに行かないし……


 あ、そう言えば、家を出る前急いでいてトイレを使った時に丁度きれたような……


 自分じゃん……


 

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