魔道拳(後編)
「うおっ!」
つい口から変な声が漏れる。僕はデルの『魔道拳』を受けた両手に激しい痛みを感じる。足が大地にめり込み、なんとか耐えようとするが踏ん張りが効かない。こらえきれず、後ろに吹っ飛ばされる。
なにっ!
僕の両手が間違いなくいかれている。慌てて収納からエリクサーを出してかける。
「嘘つけーっ! 何がパンチ数発分だ!」
つい、立ち上がるなり、叫んでしまう。僕の防御力なのにこの威力。ヤバすぎだろ。
「すみません、人に対して打つのは初めてだったので。と言うわけで、『魔道拳!』」
再びデルから『魔道拳』が放たれる。反省全く無しかよ、僕は収納に入れようとするが入らない。僕の収納には生き物は入れられない。あれってまさかの生き物認定?
僕は咄嗟に地を蹴り大きくかわす。
「えっ!」
忘れていたデルの能力、『投擲必中』、白い手は直角に軌道を変え僕に迫る。
「ドエーーーィ!」
収納から愛用のハンマーを出し、『魔道拳』を叩き砕く。手にかなりの衝撃が走る。ヤバすぎだろ。コレ……
「殺す気かっ! 俺になんか恨みあるのか?」
「すみません、つい、せっかくのチャンスなので、徹底的に威力の検証をしたくて『魔道……』」
ぐわーーーん!
「止めーい!」
収納から金タライを出して、デルの頭に落として、やっとこの不毛なスパイラルから抜け出せた。新技を手に入れたからってはしゃぎ過ぎだろ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「魔道拳!」
マイの手から白い手が放たれる。ちっちゃいけどしっかり飛んでいく。すげーな、あんな適当な説明だけで、習得出来るとは……
「魔道拳!」
パムからは白いオタマジャクシみたいなのがひょろひょろ放たれて消える。出せるだけ凄いと思う。
「魔道拳!」
アンから炎が放たれる。よく見ると口から出ている。それはドラゴンブレスだろ。やっぱコイツは習得出来なかったのだろう。
「魔道拳!」
レリーフの手から黒い靄に引き攣った顔が集まったものが放たれる。それも違うだろそれって死霊魔法だよね。それに超絶気持ち悪い。
そして、真打ち、僕の番だ。
全ての力を両手の間に集める。ん、なんか手の間が温かい。え、なんかめっちゃいろんなものが集まってきてるような。そうだ、多分、収納で集められる範囲の全てのエネルギーを今僕は両手の間に集めている。これは魔道拳ではないな。名前を考える。収納、荷物持ち……
「荷道拳!」
荷物持ちの技だからとりあえずの名前を付けて放つ。うーん、格好よくないな。
ぽしゅ
僕の手から黒い玉が発生して、ゆっくり飛んでいく。あ、やっぱりしょぼかったと言うパターンか……
ゆっくり飛んでく玉はふよふよとずっと飛んでいく。
「ザップ、触ってみたら?」
マイの言葉で、僕は何も考えず玉に近づいて触れてみる。
どごーん!!
触れた瞬間、玉は大爆発を起こす。なんとか耐えたけど、これはデル以上だ。
新たな必殺技を手に入れた。けど、使いにくそうだな……
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