武器の手入れ
誤字脱字報告、本当にありがとうございます。チェックしてマメに訂正してるのですが、見逃しも多いです。今後ともお手数ですが宜しくお願いします。
「ザップって、いつもハンマー磨いているわね」
マイが僕に話しかけてくる。ここは家のリビング。今日はゆっくりしようと思っている。時間が空いたので、愛用のハンマーを磨いているところだ。このあとは他の武器も心置きなく磨く予定だ。
「そりゃ、そうだ。命を預けている武器だからな」
このハンマーには自己修復能力がついている。何もしなくてもある程度はきれいなままだけど、磨かないとギラギラにはならない。陽光を照り返しギラギラしてるのを見ると心が和む。
いつも、まずは粗めの金だわしでこびりついたゴミを取り、次は王都で見つけたスチールウールという細かい鉄の糸が集まったモノでたくさんついている刺の根元まで綺麗にする。これでキラキラにはなるけど、まだ甘い。ここからは布で力を込めてゴシゴシ磨く。ここまですれば満足だ。ビカビカギラギラになる。最後に水気があるとサビやすくなるので、布でうっすらと油を表面に塗っていく。ハンマーを右手で掲げる。その表面に歪んだ僕の顔が映る。完成だ。素晴らしい!
『次は私ですね』
『いや、次は俺様だ!』
頭の中に二人の男の声がする。面倒くさい事に、ハンマーの次に磨かれる順番で、勇者の剣と瘴気のハンマーがいつも揉める。僕のハンマーは無口なのに勇者魔王武器の2人は事ある毎に収納から僕に話しかけてくる。正直ウザい。
「お前らは最近使ってないだろ。磨く必要ないだろ」
『残念です……』
『しょうがねーな……』
どうも二人とも磨かれるのは大好きみたいだ。何がいいんだろ? 男に全身を磨かれる事を考えるだけで、僕はゾッとする。
「ザップー、また武器と話してるの? 外では恥ずかしいから止めてよね。そう言えば、ザップのハンマーっていつの間にかスキル増えてるわよね。なんでだろ」
マイが机に頬杖をつきながら口を開く。ん、もしかして僕が磨くのをずっと見てたのか?
『それは私がお答えしましょう』
「うわっ!」
つい僕は驚いてハンマーを落としそうになる。振り返ると奴がいた。小柄なスケルトンだ。
「おいおい、脅かすなよ」
『いやー、私、ずっとここに居たんですよ』
この小柄なスケルトンは、魔道都市の導師ジブル。普段は可愛らしい見た目幼女だけど、スケルトン等に変身するという役に微塵も立たないスキルを持つ。戦闘能力は皆無だが、スケルトンジブルは気配が薄くなるので、よくこういうイタズラをしやがる。
「何で今日はスケルトンなんだ?」
『今日はあんまりにも寒すぎるので、スケルトンしました』
そう言えば、スケルトンは熱さ寒さには強いそうだ。
「マイ姉様、コーヒー下さい」
半纏という、布団を前で止める洋服にしたようなものを羽織った炬燵ドラゴン娘のアンが現れる。基本的には奴は炬燵から出ないのだけど、ジブルの魔法で部屋の中は温かいので、飲食のためには動いている。アンはマイからコーヒーを貰ってソファに座る。その横にジブルも座って話し始める。
『それで、さっきの話に戻りますけど、ザップのハンマーは古竜を叩き捲ってますから、その時返り血を浴びてます。強いドラゴンなどの血を浴びると人種はスキルを手に入れたり武具は強化される事があるんですよ』
『古竜』
頭の中で瘴気のハンマーが呟く。
『返り血』
勇者の剣が続く。
彼らの意識が半纏ドラゴンに向いているのが解る。今日の角当ては水玉だ。折れた方の角の角当てはピコンと曲がっている。ちょっと可愛い。
まあ、そうだな、頼むだけ頼んでみるか……
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ていっ!」
さすが勇者の剣だ。一撃でアンの爪を切り落とした。
ごんごんごんごん
僕はドラゴンのアンの背中を軽く叩いてやる。
「グルッ、グルックー」
嬉しそうにアンが喉を鳴らす。なんか鳩みたいな声だな。
『俺様が爪切り……』
『私がマッサージ用具……』
武器達には若干不満があるみたいだけど、古竜を攻撃? してるからいつかは強化される事を祈る。
読んでいただきありがとうございます。
みやびからのお願いです。「面白かった」「続きが気になる」などと思っていただけたら、広告の下の☆☆☆☆☆の評価や、ブックマークの登録をお願いします。
とっても執筆の励みになりますので、よろしくお願いします。