荷物持ちの妹来る(3)
「消えた……」
あたしはザップ妹の居た所を呆然と見つめる。
トントンッ。
扉を叩く音がする。
「もう、入ってもいいのか?」
ザップが部屋に入っても、もう問題ないと思う。露出過多なので、服を着せようとしていたザップの妹はもう居ない訳だし。その前に部屋の気配を探るけど、あたし的には誰も居ないと思われる。
「いいわよ」
あたしは扉を開けてザップを招き入れる。
「妹は?」
「消えちゃった」
「そうか」
え、それだけ? 納得するの? 妹が消えたのに?
「これって、どういう事なの?」
ここで聞かないとザップは話さない。最近はマシになってきたけど、彼は最低限しか話さない。
「どういう事って、そうか、話して無かったな。スキルだ」
「え、見えなくなるスキル?」
「少し違う。まあ、飯の後に話そう」
「あ、そうね」
すっかり、ご飯の事忘れていた。美味しいのが出来たのに、妹の事で頭がいっぱいになっていた。
そして、あたしたちは、リビングに向かった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「で、なんであんたがここにいるの?」
ザップ妹も食卓についている。とは言っても、しっかりもう1人分朝食は用意したのだけど。
あたしの中で何かがあの娘は敵だと警鐘を鳴らす。ザップの妹だと言うけれど、血は繋がってないし、明らかにあの娘のザップを見る目は恋する乙女の目だ。しかも可愛い。あり得ないくらい可愛い。帝国の学園の制服だと思うけど、紺のブレザーにプリーツスカート。多分、王都とかを歩いていたらひっきりなしにナンパされると思う。
うん、ザップとは間違い無く血は繋がって無い。
食卓にはザップとあたしと、アンちゃんとジブル、それとザップ妹がいる。猫のモフちゃんは仕事が忙しいそうで、しばらく実家に帰っている。魔王である姉が戦闘力オンリーの脳筋なので政務系は全般、四天王が担当してるらしい。
「初めまして、私はティタ・グッドフェロー、ザップの妹です。これからもよろしくお願いします」
ザップ妹は立ち上がって深々と頭を下げる。見た目は理知的で、さっき破廉恥な行動に出てたようには全く見えない。もしかして、何かしらの理由があるのかも?
「あたしは、マイ。戦士よ。家事全般をやってるわ」
「マイさんね。やっぱり家政婦さんなのね」
「家政婦じゃないわ! ザップ、何とか言って!」
あたしはザップを見る。なんか複雑そうな顔をしている。
「ティタ、マイは家政婦じゃないよ。俺の大事な、大事な……仲間だよ」
ザップは苦笑いしている。言葉に詰まったけど、それがいい意味であることを祈る。あたしがザップの中で仲間以上でありますように。
「ふふっ。仲間ね……」
ザップ妹、ティタが勝ち誇ったような顔であたしを見ている。恋人じゃないなら妹の方が有利とでも思ってるんじゃないかな……
少し悔しい。