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 バク転


「せいっ!」


 気合を込めた僕のジャブをデルはスゥエーでかわす。デルは警戒してか広めに間合いを取る。さすがだな。ジャブはフェイントで掴んでからグラウンドに持ち込もうと思ってたのだが。

 けど、下がりすぎだ。今ので体がつまって、咄嗟には大きく動けないはず。僕は突進からのストレートを放つ。これもかわされたら掴みに行く予定。受けられても避けられても僕の勝ちだ。


 シュタッ!


 デルは後方に飛びバク転で距離を取る。


「それだっ! デル、ストップ!」


 反撃に出ようとするデルが手を止める。


「前々から思ってたのだが、そのバク転で攻撃をかわすって何かメリットあるのか?」


 いつの間にか、他のみんなも手を止めて集まってくる。


「バク転で攻撃をかわすメリット?」


 デルがオウム返す。


「それは……」


 デルは少し考え込んだ。


 


 今日はデル先生の格闘技講座。メンバーは、僕、マイ、マッスル黒エルフのレリーフの三人だ。ドラゴン娘のアンは炬燵こたつの番人と化していて、子供族ホップのパムも寒いのは苦手だという事で今日は来ていない。かく言う僕もかなり寒い。そろそろ本気で対策を考えないと。

 今日も準備運動、柔軟、基礎練習の後、組み手をしていた。そして、マイにレリーフがボコられてる横で、僕とデルは組み手を始めた。事前に解らない事、気になった事があれば尋ねるように、デルに言われていた。


「バク転で攻撃をかわすメリット。それは……」


 デルはまだ溜める。もしかして答えが見つからないのか?


「格好いいから?」


 デルは小首を傾げている。ほんのたまに見せるデルの幼い仕種は可愛らしい。けど、疑問形?


「それは冗談で、普通に後ろに大きく跳んだら着地するときに狙われます。ですからバク転とか側転で移動するとそのリスクが減りますし、着地の時に体が沈むのですぐに動けます」


 なんか取って付けたような理由だな。


「けど、出足払いみたく着く手を刈られたりしたら危ないんじゃ無いか? それに、一瞬だけ相手が見えなくなるからやっぱりメリット無いんじゃないか?」


「じゃあ、実際にやってみよっか?」


 マイの発案で、僕攻撃する。他のみんなバク転で避けるという事を考察することになった。


 まずはデル。僕の攻撃をしなやかに後ろに状態を倒してかわす。下から襲いかかって来る足をかわしたら、もうデルは着地している。む、全く隙が無い。けど、ブリッジしてから後ろに手をついてたけど、これってバク転なのか?


 次はマイ。僕の攻撃を後ろに跳びながらバク転で避ける。追撃するが、マイの着地してから次の攻撃の方が早い。むぅ。


 最後にレリーフ。ん、なんかこいつ前より身長伸びてないか?


「レリーフ、まだ背が伸びてるのか?」


「いえ、違いますよ」


「目線がお前の方がかなり高くなったような?」


「あ、それはですね、最近筋肉のつきが悪いので、手足の骨を折って伸ばしたまま回復するというのを繰り返して、少し伸ばす事に成功しました」


 まじか? そんな方法で身長伸ばせるのか? 僕はもう少し背丈が欲しいけど、それは無理だ。痛すぎるだろ。こいつ頭の中どうなってるんだ? 筋肉増やす為にそこまでするのか?

 気を取り直してレリーフを攻撃する。


 ブリバリッ!


 なんか、布の破ける音がしたような?


 僕の攻撃をなんとレリーフも器用にバク転でかわす。こいつだけは僕の側にいると思ったのに。巨体のくせに体は柔らかく気持ち悪い。

 追撃しようとするが、咄嗟に僕は後ずさる。

 目の前には怪人がいる。破けて落ちた道着の上にブリーフ1枚で構えるスーパーマッスルボディの男……


 嫌だ! あんなのとは戦いたくない!


 さすがだレリーフ。僕の心を攻撃するとは…… 

 まあ、パツパツの道着で無理したらそうなるわな。


 !!!


「レリーフは、ブリーフ!!」


 我ながら上手い事言ったと思う。


 グゥワーン!


 僕の頭の上何か落ちてきた?


 金ダライ? 音は大きいけど、あまり痛く無い。


「品がないし、おもしろくないわ!」


 マイが声を張る。


 どうも、僕の必殺ツッコミはマイにラーニングされたみたいだ。

 マイには僕の魔法の収納の管理者権限を渡しているので、自由に僕の収納を使える。ポータルを使って僕の頭上にタライを出したのだろう。

 最近のマイのツッコミは強力で命の危険を感じていたからこれで安心だ。


 そしてなんやかんやで有耶無耶うやむやになり、僕がバク転が出来ない事は有耶無耶うやむやになった。


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