秋忍者(後)
「それで、お前は『忍法木の葉隠れの術』は使えるのか?」
僕は忍者ピオンに問う。
「まぁ、一応は……」
「なんか元気ない返事だな。とりあえず見せてみろ」
僕とピオンは街道で対峙する。ほかの3人は道端に座って見ている。
「忍法木の葉隠れの術!」
ピオンは胸の前で香ばしいスタイルの印を組む。これだ。これは僕の好物だ!
辺りの木の葉が舞い上がり僕の方に降り注ぐ。
なんだこりゃ?
足りない全く足りない。
落ち葉の間から、ピオンが僕に背を向けて逃げようとするがほぼ丸見えだ。木の葉って思った程目くらましにならない。
くうっ、忍者ジャスティス丸の技はフィクションだったのか……
ガシッ
僕は逃げようとするピオンの腕を掴む。
「な、なんで……」
「なんでもムカデもあろかい。丸見えだっつーの」
「すまない、使ったの、初めて……」
少しモジモジしてるピオンは可愛らしい。
「そうか、頑張ってくれたんだな。じゃあ、もっと改良して、必殺技に昇華しよう」
そして僕達は協力して忍者ジャスティス丸の『忍法木の葉隠れ』を再現する事にした。
「よし、いい感じだ。それを俺に向かって吹き付ける」
ピオンが風魔法で、大量の落ち葉を舞い上げる。これってかなりの落ち葉をつかうな。事前にかき集めとかないと難しいかもな。
「えいっ!」
ピオンが僕に落ち葉を向かわせる。いい感じだ。ピオンの姿は見えない。
そして落ち葉は晴れる。
道の傍らに横たわるピオン。体は落ち葉で隠れているが、顔が出ている。駄目だ。隠れきって無い。
「顔まで落ち葉で隠すの難しい」
「言い訳はいい。もっと頑張れ。伝説の忍者になるために」
「わかった。ザップ」
そしてリトライ。
僕の目の前の舞い散った落ち葉が晴れる。うん、いい感じだ。ピオンの姿は見えない。けど、道の傍らにはこんもりと落ち葉の山が不自然にある。よく見ると人型をしていて、とくにその胸の辺りが不自然に盛り上がっている。もろバレだ。
「ちぇすとーっ!」
「はうっ!」
さっき拾ったどんぐりをピオンに投げる。ピオンが跳ねて起き上がる。
「いい線いってたんだが、惜しかったな」
「残念……」
そこでふと思いつく。
「じゃあ、次、マイいってみようか」
「え、あたし?」
そう言いながらもマイは耳をピコピコさせながらノリノリでやってくる。
「じゃ、ピオンも受ける側だ」
僕とピオンの前にマイが立ちはだかる。
「いくわよ、必殺『木の葉隠れの術』」
マイの澄んだ声が響く。今気付いたけど、『木の葉隠れの術』に『必殺』って言葉はおかしいよな。
木の葉がドバッと舞い散り僕らの視界を塞ぐ。そして視界が晴れた時、マイの姿は掻き消えていた。
「おお、マイが消えた。成功だ。けど、お前の術が劣っていた訳じゃない。ただ、何て言うかな……」
「ザップ。言いたい事解ったでゴザル。わた、拙者のプロポーションが良すぎたのでござるな。マイのようにまな板だったら綺麗に隠れられたのでござるな……」
「誰がまな板じゃい!」
道端の落ち葉が舞い上がりマイが立ち上がる。ここまで鬼気迫るマイはレアだ。
僕達は一目散に逃げ出した。
そして僕とピオンは若干マイの折檻を受け、その後も『忍法木の葉隠れ』を楽しんだ。
少しだけ解った事はこの忍法には適した体型が必要という事だった。
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