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 秋忍者(序)


「くっ、追っ手が多すぎる」


 正義の忍者ジャスティス丸は、お姫様と一緒に悪の侍達から逃げている。


 森にさしかかったところで、幾人もの侍達に追いつかれる。


「食らえ!木の葉隠れの術!」


 ジャスティス丸は片手で印を組みその強力な術を発動させる。辺りに散らばっていた木の葉が渦を巻き侍達に襲いかかる。


「「「なんだ!なんだ!」」」


 侍達の回りを舞い散る落ち葉。そして侍達の視界が戻った時には、ジャスティス丸と姫の姿は消え失せていた。


「どこだ?」


「どこにいきやがった!」


 侍達は辺りを見渡し、しばらくして森の方に走って行く。

 

 ぶわさっ!


 道の脇の木の葉が舞い散り、ジャスティス丸と姫が現れる。


「危ないところでござったな」


「はい、さすがですジャスティス丸様」


 姫はうっとりとした目でジャスティス丸を見ている。


「では参ろうか、姫」


「はい、ジャスティス丸様……」


 そして、彼らの逃避行は続くのであった。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「それで、そんな三文話を聞かせて、私に何をしろと?」


 光の無い目で、忍者ピオンが僕をじっと見つめる。ん、ここまで言って解らないのか?

 装備はいつもの黒装束で、腕を組んでいてデカイ胸が押し上げられてるが、それには視線を向けないようにする。マイに叱られるからな。


 僕は収納の中に入れている、最近おきにの昔の小説、『正義の忍者ジャスティス丸』を気持ちを込めて朗読してやった。読んでるだけで僕の心が熱くなる。


 因みに、今、僕達は辺りに落ち葉がびっしり降り積もった山沿いの街道にいる。僕、マイ、アンにジブル。スペシャルゲストは忍者ピオンだ。

 僕は街中の街路樹からはらはらと舞い散る落ち葉を見て、頭の中に鮮明にジャスティス丸の事が思い浮かんだ。『忍法木の葉隠れ』、それは今の季節しか出来ない事なのではないか?しかも丁度いいことに忍者は2人もいる。家の隣の店に急ぎ、非番の方をとりあえず連れて来た所だ。


「ちょっと待てよ、お前忍者なんだろ、それならちゃんと忍者らしく喋れよ。まず、自分の事は『拙者』、そして語尾には『ござる』とつけろ。それだけで忍者力がアップして、『ジャスティス丸』に近づけるぞ」


「それで、その『ジャスティス丸』に近づいたら何かいいことあるのか?」


「格好よくなれる」


「格好よく?」


「お前、全ての伝説の忍者達はそう言う話し方をしている。伝説の忍者みたいに格好よくなりたいなら、まずは模倣からだ。俺が『正義の忍者ジャスティス丸』シリーズを全部貸してやる。それで最強の伝説の忍者を目指せ」


「最強……伝説……」


「だめよ、ピオンちゃん、ザップの言うことを真に受けたら。だって『ジャスティス丸』って本の人物なんでしょ?」


 せっかく、よりピオンのキャラクターを立たせてやれそうになったのにマイから横やりが入る。ピオンのような美少女が『拙者』とか『ござる』とか話すというロマンが伝わらないようだ。


「確かにジャスティス丸は架空の人物だ。けど、格好いい格好よくないに実在か架空なんて関係ないだろ。ピオンが語調を改めるのに何か不都合があるか?」


「えー、だって可愛くないじゃない」


「そうか、では問おうピオン。お前は『可愛い』と『格好いい』どちらを手にするのか?」


 おお、我ながらいい感じのセリフだ。魔王っぽい。


「それは……私、拙者は格好よくなりたいで、ござる」


 指導完了。では本題に移るか。


『忍法木の葉隠れの術』だ!

 

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