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 猫と炬燵


「ん、なんか変な臭いしないか?」


 僕は今、猫になって炬燵の中にいる。


 ポカポカだ。


 魔国四天王の内の1人、猫のモフちゃんに猫に変身する魔法をかけて貰った。


 丸まった僕の隣にはもう一匹の猫が丸まって寝ている。モフちゃんだ。僕の声に耳をピクピクする。触りたい。白地に黒の模様が炬燵の赤い光で赤地に黒に見える。

 僕がピコピコする耳に肉球ハンドを伸ばしかけた時、モフちゃんは目を開けた。


「変な臭い?気にしねーようにしてたんだが、オメーが言うなよな。この臭いはオメーの足の臭いだよ!猫は鼻がいいんだよ。と言うわけで、今後お前は炬燵に入る前にしっかり足を洗う事。まあ、けど、人間には分からない程度の臭いだがな」


 僕はショックを受ける。この魚を干物にしているような臭いが僕から放たれたものだとは……

 さっき少し足を炬燵に突っ込んだだけなのにまだ臭いがのこってるのか?

 まぁ、モフちゃんは人間には分からないって言ってる事だし、今後は気をつけよう。


「アンちゃーんいないのー?」


 炬燵ごしにマイの声がする。


「あー寝てるし。入るわよ」


 おわっと!


 突然差し出されたマイの足を避ける。危ねーな。といっても炬燵は足を入れるものか。

 またさらに入ってくる足を避ける。子供?と言う事は導師ジブルか?

 アンのも含め三本から足に囲まれる。


 とりあえず出よう。


 空いてる所から出ようとすると、また足が入ってくる。咄嗟に避けてしまう。

 僕は4方向から足に囲まれる。どうしよう?

 けど、最後の足は誰の足だ?むっちりしていてミニスカートをはいている。けど、足はしっかり閉じているので、パンツ的なものは見えない。


「どうすんだ?明らかに変態だな。頑張れよ」


 モフちゃんが近づいて来て僕の耳元で囁く。


「にゃーん」


 可愛らしい声を残してモフちゃんは炬燵から出て行った。


「あ、モフちゃーん」


 モフちゃんはどうやらマイの所に行ったみたいだ。


「牛猫、ひさしぶり」


「おう、ジャリもひさしぶりだな」


「ジャリって、わたしはあなたより年上のはずよ」


 ジブルとモフちゃんのテンプレ会話だ。いつも会う度に同じ事言ってる。


「きゃー、モフちゃんひさしぶり。マイ姉様。わたしにもだっこさせて」


 もう1人は少女冒険者の魔法使いルルか。うわ、僕もモフちゃんだっこしたいし、ルルに抱っこもされたい。間違いなく僕の知ってる中ではルルが一番胸が大きい。

 今出ていったら、僕も猫だからみんなに可愛いがって貰えるのでは?

 けど、そう上手く行くだろうか?

 僕は今炬燵の中。みんなの足に囲まれている。ジブルとルルはスカートっぽいし、マイはショートパンツだ。なんと言うか辺りを見渡すと背徳的な光景ではある。ここで僕が出て行ったら、女の子たちはどう思うだろうか?


『生足を愛でるために炬燵の中に潜んでいた変態』


 僕のいままで温めて来た、クールな頼りになるお兄さん的なイメージが崩れ去ってしまう事だろう。


「ねぇ、モフちゃん。ザップ知らない?見かけないんだけど」


 そういえば、今日しばらくの間、マイとは会ってない。

 む、モフちゃん、なんとか誤魔化してくれ!


「にゃ?ザップ?ザップなら炬燵の中にいるニャー。炬燵の中でみんなの足とかを見てるニャー」


 何っ!


 ソッコーで、売りやがった!


 モフちゃんのマイに対してだけの猫なで声が少しカンに障った。


「もうっ。ザップがそんな事するわけないじゃない」


 さすがマイ、僕の事わかっている。


「そうですよ、ザップさんは、ヘタレですから実行に移さず妄想で満足するタイプですよ」


『それはお前だろ!』


 つい口に出しそうになるが堪える。ルルとは1度しっかり『おはなし』が必要そうだな。


「まあ、けど、ザップってなんか女の子に興味なさげじゃない?わたしがセクシーな服着てたりしてもあまり見ないし」


 ジブル、僕は幼女には興味がないだけだよ。


「それに、なんかホモっぽい領主と仲いいし」


「俺はホモちゃうわ!」


 いかんつい声が?しかも、体が大きくなる。いかんもしかして魔法が解けるのか?




「……確かにホモじゃないわね。変態ね……」


 マイの冷たい声が響く。僕はちょうどマイの太ももに顔が挟まれている。スカートのジブルとルルを見ないようにマイの方を向いていたからだ。


「うわ、足になんか当たってる……」


 ルルが炬燵から恐る恐る足をだす。ごめんなさい。


「ゲッ、ザップ、裸!」


 ジブルが炬燵を開けてまじまじ見ている。


「すー、すー」


 それでもドラゴンは寝ている。




 起こった事をつぶさに説明したけれど、なんかしこりは残ってしまった。


「よい子の諸君、炬燵は足を入れるもので潜るものではないぞ!にゃー!」


 モフちゃんが僕に指を立ててなんか言っている。二足歩行もできるのか。確かにその通りだけど、僕の心の中に猫ちゃんに湧くはずのないヘイトが溜まってきた。


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