レッドドラゴン(後編)
「アアアーッ、アッ。アアアーッ、アッ」
荒野で半裸で1人踊り叫ぶ僕……
しかも寒い。
出来るだけ目立つように開けた所にいる。おかげでたまに吹き荒ぶ風が体を冷やす。なんか丸い草の塊がコロコロ転がっていく。
なんか他に方法は無いのか?
考えるけど思い浮かばない。レッドドラゴンは空を飛べる。その行動範囲はかなり広いはずだ。こちらから見つけるのは不可能に近いから、あっちに見つけて貰うしかない。けど、本当に見つけて貰えるのか?
僕は、アーアー叫び続ける。色々試した結果、僕的にはそれが一番遠くまで届いてそうに思える。腹の底から声を出し続ける。
もう帰ろうかな……
少し弱気になった時、空に点が。
点がどんどん大きくなる。赤い。みるみる大きくなる。羽の生えた大きなトカゲみたいな姿が確認出来る。ドラゴン、レッドドラゴンだ。
そのまま僕に突進してくる。その右腕が地面擦れ擦れに僕に振るわれる。
ドゴン!
僕は両腕を交差させて受けるが、大きく吹っ飛ばされ地面を転がる。
立ち上がると、羽で辺りの砂塵を撒き散らしながら僕のそばにドラゴンは降りてきた。思ったより大きくない。アンより一回りは小さいな。
「グゥオオオオオオーッ!」
咆哮。恐慌効果のある奴だ。これはよろしくない。ドラゴン、興奮しすぎだ。
僕はフラつきながらドラゴンに向かう。ドラゴンがこちらを向き大きく口を開く。その口の中に炎が渦巻く。
「ゴオオオオオオーッ!」
放たれた火炎のブレスを収納にしまう。中々の熱気だが、どうにか僕のミノタウロスの腰巻きは無事だ。ブレスを吐き終わったドラゴンと目が合う。まるで獰猛な肉食獣みたいだ。その瞳には微塵も知性を感じられない。見つめ合う事一瞬、ドラゴンは僕に背を向ける。
ブゥオン!
風を切る音と共に僕にその長い尾が振るわれる。僕はまともに食らい吹っ飛ばされる。大地を転がり動かなくなった僕にドラゴンは近づくと、その大きな顎で僕を咥える。そして、ドラゴンは羽根を広げ羽ばたき始め、空に飛び出した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「グオオーッ、グオオーッ」
ドラゴンは丸まって大きないびきをかいている。もうかれこれ寝てから1時間は経ったはずだ。もう大丈夫だろう。
僕はあの後ドラゴンの巣に運ばれて行った。乱暴に地面に落とされるとしばらくして奴は眠りについた。後で僕を食べるつもりだったのだろう。
アン 『ご主人様つきました』
マイ 『こっちはオッケーよ』
ザップ 『作戦開始。30秒後に来い!』
アン 『りょーかい』
マイ 『はーい』
スマホで文章でやり取りして、マイとアンにスタートをかける。では行くか。僕は収納から愛用のハンマーを取り出し、最速で駆ける。跳び上がり、振り上げたハンマーを振り下ろす。
ドゴン!
一撃だ。ドラゴンの眉間を砕いた。
「ザップー」
マイが大きな斧を片手に駆けてくる。その後ろにはドラゴンが現れる。アンが変身したのだ。
「ていっ!」
マイは倒れたレッドドラゴンの首筋を斧で切り裂く。アンはドラゴンの尻尾に噛みつき後ろ足で立ち上がり宙吊りにする。僕は首筋から流れるドラゴンの血を余すこと無く収納に入れる。今までは捨ててたけど、ドラゴンの血も高額で売れるそうだ。もったいない事していた。血抜きがしっかり終わったのを確認してレッドドラゴンを収納に入れた。
「完璧ね!」
僕はマイとハイタッチする。今回は最高のドラゴン肉を食べるために細心の注意を払った。暴れたあとの魚や動物の肉はどうしても味に変な癖が入ってしまう。ドラゴン肉はそれだけで美味しいのだが、今まで食していた物は激しい戦闘後のものだった。穏やかに倒せばもっと美味しいのではというマイの仮説がこれで検証出来る。
「ご主人様、早く帰って食べましょう!」
人間に戻ったアンが急かす。
「ザップ、ステーキと唐揚げどっちがいい?」
「そうだな、どっちも捨てがたいな」
「ご主人様、それなら両方でお願いしましょう」
「わかったわ、それじゃあ早く帰って準備しましょう」
家に帰りドラゴン肉を十分に堪能したが、予想通りいまだかつてなく美味かった。
どうでもいいことですが、ザップさんの叫び声は、『移○の歌』っぽい感じです。レッ○ツェッペリンさんで、赤つながりです。
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