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 カトラスフィッシュ


「頼む、この通りだ」


 僕の前でテーブルにこすりつけるように頭を下げているのは、この国の王ポルトだ。


「分かった。引き受けてもいいが理由を聞かせろよ」


「話すが、少し込み入った内容で、悪いが人払いしてもらえるか?」


「マイとアンにも聞かせられない内容なのか?」


「‥‥‥‥」


 ポルトは口をつぐむ。


「という事は、また、女の子に頼まれたのね。その『カトラスフィッシュ』を欲しいって」


 マイは立ち上がる。部屋を出ようとしてるのだろう。


「え、何で分かった?」


 ポルトは間の抜けた顔している。決して王様がしていい顔じゃない。


「まじすか。また新しい女の子にちょっかい出してるのですか。王様って以外にモテないんですね」


 席を立とうとしてたアンはまた座り直す。人払い必要なしだもんな。


「王様がモテないんじゃない。ポルトがモテないんだ。その『カトラスフィッシュ』が欲しいっていうのは、無理難題で断る口実なんじゃないか?」


 ポルトの顔が驚きに染まる。え、そうなの?的な顔だ。


「ポルト、もっと女の子の気持ち考えろよ」


 ん、何か悪い事言ったか?みんなが呆けた顔で僕の顔をまじまじ見ている。


「ううんっ。仕事は仕事。経費プラス大金貨1枚でいいわ」


 咳払いして、マイが口を開く。あれっ、1番嫌がりそうなマイが引き受けた。


「マイさん、ありがとう」


 ポルトが身を乗り出して、マイに手を差し出す。


「そう言う所が多分、嫌がられる所よ、ポルトって無駄に女の子触りたがるから」


 マイは動かない。ポルトは顔が引き攣る。


「相手との距離を縮めようとしてるんだと思うけど、馴れ馴れしくて気持ち悪いですね」


 アンがポルトにとどめを刺す。


「馴れ馴れしい……気持ち悪い……」


 ポルトが打ちひしがれてるけど、マイの手を握ろうとしたときイラッとしたので、慰めるのは止めた。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「本当になんか金属みたいだな」


 僕達の食卓には『カトラスフィッシュ』の塩焼きが並んでいる。臨海都市シートルの魚市場で今日買って来たものだ。『カトラスフィッシュ』は太刀魚とも言うそうで、見た目は歯がするどくて1メートル位ある本当に刀みたいな魚だった。高額な魚では無かったので水揚げされてた数匹を買った。旬は過ぎてるけど、年間を通じて捕れて、いつでも美味しいそうだ。そしてポルトに納品して僕達もいただいているって訳だ。


「見た目によらず、たんぱくですね。うん、美味しいですね」


 僕が躊躇ってた間にアンは完食している。僕も口にする。うん、癖が無くほくほく柔らかくしてて美味しい。


「うん、あたしも初めて食べるけど、美味しいわ。けど、これを欲しがった女の子ってどんな娘だったのだろう?」


「まあ、あいつは悪い奴じゃないから上手く行ったらいいな」



「お邪魔しまーす。ザップ、珍しい魚貰ったんだ」


 ラパンだ。ラパンが部屋に駆け込んで来た。


「え……」


 ラパンの動きが僕が食べてるものを見て止まる。ラパンの手には銀色の刀みたいな魚が……


 ポルト、それは駄目だろう……

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