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 紅葉狩り 5


「うわ‥‥、凄ーい!」


 マイがはためく髪を押さえて声を上げる。開けた場所なので時折強い風が吹く。

 僕達の前には抉れるような渓谷に掛かった1本の吊り橋。かなりの高さがある。見てるだけで目眩を起こしそうだ。

 けど綺麗だ。僕達は吊り橋の端に近づく。はるか眼下に緑や茶色や黄色の葉っぱの木を華やげている紅葉の赤に囲まれたゴツゴツした岩の中を流れる川。


「綺麗ねー。なんか『そうめん』みたいだね」


 下をのぞき込むと段差から落ちている水は白く、遠目には確かに『そうめん』みたいだ。けど、川は微妙に青い。


「けど、麺汁めんつゆは青いな。ブルーハワイ味か?」


 夏に飲んだ、青いカクテル『ブルーハワイ』を思い出した。


「うわ、甘い『そうめん』……一気に美味しくなさそう」


「なんか、言ってる事アンみたいだな」


「そうね、今日、色々食べたからかなぁ?そういえば、やっぱりアンちゃん連れてきたらよかったね。美味しいもの食べたし」


「また、今度連れてこよう」


「そだね」


 僕達は吊り橋を歩き始める。橋桁はなんとか人が2人並んで歩ける。強い風が吹く度に橋は結構揺れる。大丈夫だろうか。自然に手すりを握る力が強くなる。


「ザップ、高い所苦手なの?」


「おい、マイ、何してんだ。危ないだろ」


 マイの声に振り返ると、なんとマイは手すりの縄の上に立っている。


「大丈夫よ、慣れてるから」


 風が吹いて橋が揺れてもマイは全くバランスを崩さない。けど、見ている僕はハラハラだ。


「それに、落ちたらザップが助けてくれるでしょ」


 マイはいたずらっぽく微笑む。


「そうだな。マイが落ちても俺が助けてやる。俺は落ちる事には慣れてるからな。全ては転落から始まった事だしな」


 確かにマイが落ちたとしても、僕の収納スキルの1つ、収納ポータルの空間固定を駆使して問題なくマイを助ける事が出来るだろう。それはそうだけど、見ててハラハラする事には変わらない。けど、このなんか試されてる感が少し気に食わない。


 意趣返しだ。


「じゃあ、俺が落ちたらマイは助けてくれるのか?」


「え?」


 僕は手すりに手をかけ、躊躇い無く吊り橋から身を踊らせる。


「ザップー!」


「へ?」


 マイも躊躇う事無く吊り橋から身を投げ出す。脅かそうと思ってただけなのに。想定外だ。僕はジブルに頼んでたものを収納から出す。僕は魔法の絨毯に乗って、落ちていくマイに手を伸ばす。


「マイーッ!」


「ザップー!」


 マイの差し出した手を掴み絨毯に引き込む。加速がついてたので、絨毯は激しく凹み体勢を整える。傍からみたら巾着みたいになってた事だろう。


「おい、マイ、無茶しすぎだろう」


「ザップが飛び降りた……」


「すまん、驚かそうとしただけだ」


「心配した」


「すまない、今日の紅葉狩りにオチがないから俺が落ちてみただけだ」


「ザップー、紅葉狩りにオチはいらないよ。だってとっても綺麗じゃない」


 僕達は浮いている魔法の絨毯の回りを見る。色付く紅葉が飾りつけた渓谷に挟まれて微かに水の音がする。綺麗だ。確かに綺麗だ。


「それに、それだったら、いつもザップ、落ちてかないといけなくなっちゃうよ」


「それって、いつも俺が面白くないって事か……」


「いいじゃない、それでも……」


 僕とマイは見つめ合う。いかん、陳腐だが、紅葉も綺麗だけど、潤んだ瞳で僕を見るマイは……

 心臓の鼓動を感じる。さっきダイビングした後遺症か。そうだ後遺症だ。


「それでも、あたしは……」


 駄目だ、こういう空気は……


「高度を上げるぞ!」


 僕は絨毯を急発進させる。マイが僕にしがみついてくる。


「キャッ、ザップの意地悪っ!」


 そして、僕達は空飛ぶ絨毯で飛び回り、思う存分『紅葉狩り』を愉しんだ。

 山間の秘境の紅葉狩り。正直、心にくるものがあります。ヤマメの塩焼きを食べて、川や紅葉を見て、なんか聞いた事のない鳥の声など耳にしながら。すこし寂寥感を感じたりしながら。秋特有の儚さを胎んだ美しさ。ぜひ、オススメです。



 読んでいただきありがとうございます。


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