紅葉狩り 4
「そろそろ行くか」
もうしばらく滝を眺めていたい気分だけど、心なしか、少し寒くなってきた。
「うん……」
僕達は元来た道を戻る。マイが名残惜しそうに振り返る。
少し戻り、飛び石の橋を渡り進む。今度は川の向こう岸を進んでいく。この遊歩道は人がすれ違わないでいいようにぐるりと回っている。さっきと違い今度の道は歩きやすく位置が高い。
足下に川や木々を見下ろしながら進んでいく。川との距離はあるが、景色はいい。しばらく歩き、出発した建物が見えてくる。行きは結構距離があるように感じたが、帰りはすぐに感じた。なんでもそんな気がする。気分の問題だろう。
「なんかいい匂いしない?」
「何か焼いてるのか?」
香ばしい匂いが流れてくる。建物のそばで炭で村長さんが何か焼いている。魚だ。魚を口から串に刺したものだ。
「ヤマメの塩焼きいらないか?」
要らないも何も2本焼いている。僕達に売る気まんまんだ。少し歩いて食欲が戻ったので当然いただく。
「2本貰おう」
お金を払い、そばにあった椅子に腰掛け魚を口にする。僕はあまり焼き魚は好きではないが、これは美味しい。独特の臭みが全く無い。小骨は苦手なのでどうしてもちまちま食べていく。隣を見るとマイの魚はもう頭と骨だけだ。
「魚、ありつたけ焼いてくれ」
「いいんですか?」
「収納に入れる」
村長さんは合点がいったみたいで魚をどんどん焼き始める。
商魂たくましい村長さんはもう2本はすぐに焼けるように火入れしてたみたいで、すぐに焼き上がった1本をマイに渡す。
「ありがとう。ザップ」
「ああ」
マイは綺麗に魚を食べていく。これは気に入ってるみたいだな。
「手洗いに行ってくる」
建物のトイレに行く。僕の収納の能力、スマホで導師ジブルに連絡する。とある魔道具を借りるためだ。ジブルにも収納の管理者権限を渡してるので、ジブルが収納に入れたものを僕が取り出せる。
「ありがとう」
村長さんに礼を言う。なんだかんだで30本以上、魚を焼かせた。薄寒いのに汗かいてる。
僕達は建物を後にし、次の観光地に向かう。
「もみじ見るのに紅葉狩りっていうのは、やっぱり変よね」
「そうだよな。紅葉を集めて持って帰るわけでもないしな」
2人とも魚二匹食べたので歩いている。さすがに食べてすぐに走ると気分悪くなる。
「けど、結構お土産買ったから。なんていうか狩った感はあるよな。狩りや釣りとかに行って何も取れず土産買って帰るような感じだな」
「なんか分かる気もするわ。じゃ紅葉狩りは紅葉狩りだね」
「そろそろ走れるか?」
「うん」
僕はマイの手を取って走り始めた。次の目的地は吊り橋。めっちゃ高い所にある長い吊り橋だそうだ。