紅葉狩り 3
僕達は木々に挟まれた道を歩き、しばらくすると道は細くなり隣に川が見えて来た。なんとか人がすれ違う事が出来るくらいの幅だ。川はゴツゴツした岩の中を曲がりくねって流れていて道なりの地面も起伏に富んでいる。その中に出来るだけ歩きやすいように手すりがついた道が続いている。さっき入場料を払ったけど、この道を造る苦労に比べたら、銅貨5枚、安すぎる金額だったと思う。
赤く葉が色づき始めた木々の中を歩いていく。
「ヒャッ」
声がして振り返ると、マイがバランスを崩しているのに手を差し出して支える。張り出した木の根に足を取られたのだろう。
「ありがとう、ザップ」
「もう少し歩くとき足をあげたら引っかかりにくいぞ」
マイの歩き方は若干摺り足気味だ。平地で生活してきた証拠だ。山や雪の中ではもう少し1歩1歩足を上げないと足を取られる。けど、歩き方を変えるのは難しい。しょうがないので、マイの手をしっかりと握る。マイも僕の手を握り返してくる。
「わかった。気をつける」
「転ばないようにだからな」
「わかってるよ」
しばらく道なりに歩いていく。赤や黄色の葉をつけた木々の中を清流を見ながら、マイと手を繋いで歩いていく。
なんか、いいものだな。正直、紅葉を見ても何が楽しいのか今まで分からなかった。けど、もみじの赤は美しく、流れる川の音は心地よく、なんと言うか空気も澄んでいるように思われる。生きていくだけでやっとだった時は気付かなかったが、自然って美しいものだと心底感じた。当然、マイと2人っきりというのも心地いい大きな原因だろう。
しばらく歩き、目的のものが見えて来た。滝だ。巨大な滝だ。滝底のかなり近くまで道は続いていて少し戻ると飛び石で出来た橋がある。
「すごいわね」
「もっと近づくか?」
大きな岩を登って伝って行くともう少しそばまで行けそうだ。けど、ここですら飛沫が飛んできているので、岩は湿っていて注意が必要そうだ。
「行くぞ」
僕は靴を脱いで、裸足で岩に飛び乗る。
「ザップ、お猿さんみたい。ちょっと怖いわ」
「しょうがないな」
僕は靴を脱いだマイに手を差し伸べる。
マイに手を貸しながら、滝壷に1番近い岩に腰掛ける。
目の前の滝を見上げる。20メートルくらいはあるのではないだろうか?その滝を岩壁の隙間に生えたもみじが赤く彩っている。日の光に照らされた飛沫がキラキラと光る。隣をみると、マイがキラキラした目でそれを眺めている。
「綺麗だな」
「そうだね」
僕らはしばらく滝と紅葉を眺めていた。
素直に僕は時が止まればいいのにと感じた。