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 紅葉狩り 2


 ずずずずずっ


 僕は麺を啜る。麺に絡まっているのは薄めの味のスープに馴染みの味。

 昔はお金が無く、野山の食べられる草をなんでも煮こんで妹と2人で食べたものだ。その食べられる雑草を都(都)ではお洒落に山菜と呼んで高額で食している。少し複雑な気分になる。

 正直最近マイのお陰で舌の肥えた僕には物足りなさを感じる。

 山菜を口にしてみる。ほう、少し僕は感心する。あたらない、歯にあたらないのだ。どうしても山菜とかを食べると固い筋とかが口の中に残ったり歯の間に挟まったりする。それが無いんだ。1つ1つ丁寧に筋が取ってあるし、柔らかいものしか入って無い。僕が受け取った山菜はそういう物だったんだ。売り物になる訳が分かる。

 そしてもう1人の主役である『とろろ』と一緒に麺を掬う。


 ずずずずずずずっ


 おお、これは美味しい。冷やし麺系の料理にマイが『とろろ』を使ったりしてたけど、それには無い強烈な旨味がある。なんて言うか甘みに近いもの要は濃いんだ。そうか、スープの味が薄いのはこれを引き立てるためだったんだ。


「美味しいわね、自然薯の『とろろ』始めて食べたわ」


 王都のそばには山芋を栽培している畑もあり高額ではあるが食する事ができる。けど、その栽培したものよりも天然の方が山芋は美味しい。その山芋は自然薯と呼ばれている。マイは旅慣れてはいるが、僕みたいに山育ちではないから、自然薯は始めてだったのか。

 

 僕は昔、山芋はたまに食べたりしていた。けど、皮を剥いてすりおろしたりはせずに、そのまま焼いて皮を剥いて食べていた。生山芋の皮剥くのは難儀だし、摺り下ろすのも手間ではあるし。焼き山芋はそれはそれでホクホクで美味しくて妹の好物ではあったのだけど、山芋は高く売れるので掘ってる時に失敗したものや、山芋の実、『むかご』を焼いたものとかを食べていた。秋は僕達にとっては恵みの季節だった。


 ずるずるずるずるっ


 僕は麺を『とろろ』をスープごと流し込む。アンが麺をこういう食べ方をするのを非難したものだが、これはこの食べ方で正解だろう。何故なら美味いからだ。僕は音を立てて豪快に行ってるが、マイは音を立てずに食べている。


「アンちゃんや、ジブルも連れてくればよかったね」


 奇しくもマイもアン達の事が頭に浮かんだみたいだ。当然、飯はみんなで食べたく方が美味いからな。


「確かに、これは美味いけど、あいつらには肉が入っていないから物足りないだろう」


「それもそうね」


 僕達がまた麺を口にし始めると、村長さんがやって来た。


「よかったら、これも食べな。あと、あっちに肉もあるぞ」


 村長さんが持ってきたのは、植物の根っこの漬物だ。壺に入っていて、僕らは皿にとって口にする。ピクルスみたいに酸っぱく、コリコリしているがこれもなんと言うか味が強い。ネギ系の根っこだと思うがちっさいがネギの味を濃縮したような味がある。好みは分かれると思うが僕は気に入った。


「「ごちそうさまでした」」


 僕達2人ともスープまで飲み干してしまった。田舎料理あるあるで量はかなりあったのだが完食した。体が暖まり心も温かい。このそばが1杯銀貨1枚。普通の定食屋の倍くらいの価格だが、僕は満足した。観光地価格というのもあるし、なによりも『とろろ』と漬物が美味しかった。損した気分にはならない。

 村長さんが言った肉は猪肉の燻製で、アンとジブルの土産にする事にした。あと、漬物は『ノビル』という野草だそうで、その漬物を結構な量買ってしまった。すこし割高だったけど、他には無いものという事だったので少し嬉しい。漬物はサービスで村長さんが持ってきたのだけど、それも商魂かとは思うがいいものである。

 そして僕達は遊歩道の方に向かった。入場料を取られたのは少し興ざめしたが、まあメンテナンスとかあるのかもしれないからやむなしだな。


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