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 ハロウィンSS 仮装パーティー


「ぷる、ぷる、ぷるぷる」


 僕はうずくまって『ぷるぷる』言っている。僕は真っ暗な中許されたのは『ぷるぷる』言う事だけだ。辺りからは楽しそうな声が聞こえるが、僕には何が起こってるのか見る事は許されてない。僕が何をしているかと言うとそれは少し前に遡る。


 僕の名前はザップ・グッドフェロー、荷物持ちだ。ここ王都で、最強の誉れ高い冒険者パーティー『ゴールデン・ウィンド』に所属している。今日は10月31日。リーダーの勇者アレフ言うには今日は休みらしい。けど、僕には仕事だろうが休みだろうがあまり関係ない。どっちにしてもこき使われるからだ。


「おい、ザップ行くぞ」


 宿の僕の部屋に勇者アレフがやって来た。扉を叩いている。早く部屋から出ないと殴られる。僕はベッドから跳ね起きて扉に向かう。


「アレフさん、それ、何ですか?」


「ん、見て分かるだろ。吸血鬼だ」


 アレフさんはタキシードにマントを羽織り、口からは牙が見えている。今日のアレフさんは上機嫌みたいで、若干頬は緩んでいて、珍しく僕の質問に答えてくれた。何で吸血鬼に扮装しているのか分からないままその背中についていく。


「お、流石だな。似合ってるぜ」


 戦士のダニさんーと合流する。ダニーさんはその巨躯をボロボロな服で包み、体の至る所に生々しい傷跡や体を縫った跡がある。そして頭には大きなネジが刺さっている。これは知っている。『フランケン』という、物語の中の怪物だ。


「どう、似合ってる?」


「少し、恥ずかしい」


「とってもいいぜ、2人ともとっても可愛いぜ」


 やって来た、魔法使いのポポロさんと神官のマリアさんだ。アレフさんは、女性にさらりと『綺麗』とか『可愛い』とかよく言っている。僕はそれは凄いと思う。

 ポポロさんはピンクのミニスカートの女医さんの格好で顔色は悪く傷だらけだ。多分ゾンビだろう。いつもより露出が多く普通の人は見惚れるかもしれないけど、僕にはオークが服を着てるようにしか見えない。こいつの中身のゲスさ加減に自動的に頭で変換されてこう見える。こいつは、食う、寝る、僕をいたぶる事、貪欲に自分の欲望の事しか考えてない。中身は何でも貪欲に食べるオークそのものだ。

 マリアさんはフリフリの服に灰色の耳のついたカチューシャをしていて、手には毛が生えた肉球つきの手袋をしている。こいつも僕の頭の中で豚に変換される。しかも今日は獣耳のおかげで豚らしさを強化しているので、つい口から声が漏れる。


「ぶた……」


「あん、今、オメー、なんつった!」


 額に皺を寄せたマリアさんの顔が目の前にある。僕の前だけで見せる聖女の激しい裏の顔だ。瞬間腹に激痛が。ミニスカートお構いなしの膝蹴りが僕の腹に刺さる。


「ぶた、ぶたないで下さいって言おうとしたのです……」


 ぼくは蹲って頭を下げる。


「まあまあ、いいじゃないか。今日は仮装パーティー。こいつの服は持ってきたのか?」


 え、アレフさん。僕の服もあるのか?パーティーに出席できるのか?

 僕は自然に頬が緩むのを感じる。


「ん、アレフ持ってきた」


 マリアさんの手にしている物を見る。


 布?青い布?


「この布を被ってついてこい。これからお前が言っていい言葉は『ぷるぷる』だけだ。立ち上がったり、声を出したりしたら殴る」


 アレフさんがマリアさんから布を受け取って僕に放り投げるのを受け取る。


「そっかー、ブルースライムか。最弱のこいつには最適だな」


 ダニーさんが満面の笑みを浮かべる。


 そして僕はうずくまったまま布を被り闇の中アレフさん達の声や足音を頼りに這いつくばり、何度も蹴られたりぶつかったりしながら『ぷるぷる』言い続けた。


 1年前のハロウィンの楽しい思い出だ。正直思い出すだけで、腹が立つ。この世の中にハロウィンにスライムに扮装した人間が何人いるのだろうか?

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