ハロウィンSS ハロウィンにはお菓子が必要
今日も仮装頑張ります。
「トリック、オア、トリート!」
リビングに子供くらいの大きさの人物が入ってきた。異様な事に頭に目と鼻と口の穴をくり抜いた本物のカボチャを被っている。マントにローブ、声からして導師ジブルだ。
「なんだ?何を言ってる。意味がわからん?」
「ザップ、ハロウィン、ハロウィンよ」
マイも部屋に入ってくる。その格好はフリフリのメイド服にマントを羽織り顔は白く塗られていて、口からは牙が覗いている。可愛い。正直可愛い。普段よりスカートの丈が短く、胸元も少し見えている。いつもと違うマイにちょっとドキッとしてしまった。
「ハロウィン?最近王都で流行っているらしいがイマイチなんなのか分からんな?」
僕の認識では、なんか仮装する祭りで前に王都で見た時には、その仮装には統一感が無く、結局なんなのか聞きそびれてモヤモヤしたまま今に至る。
「ザップ、ハロウィンって言うのは子供たちがモンスターに変装してお家を回って、さっきの『トリック、オア、トリート』って言うとお菓子を貰えるって祭りなの」
マイが説明してくれるが、それでも謎ばかりだ。
「しょうが無いわね、私が説明するわ。西の方では10月31日には民間に死者の霊が復活するって考えがあって、それを鎮めるための祭りがこういう形に変わったらしいわ。『トリック、オア、トリート』って言うのは、お菓子をくれるか悪戯されるかどっちがいいって意味よ」
「そうか」
何か分かったような分からなかったようなだな。
「それで、マイの格好は何なんだ?」
「メイド吸血鬼よ」
そうか吸血鬼だったのか。なんか雰囲気はあるが、猫耳のおかげで吸血鬼には思い至らなかった。
「ジブル、それにしても不細工なカボチャだな。それに本物のカボチャかぶっている人初めてみたぞ」
何というか、目の大きさも違い、鼻や口も歪んでいて、イメージ呪いの人形だ。
「しょうがないでしょ、最近忙しくて買い物に行く暇なくて、それにカボチャ削るのって結構難しいのよ」
「お前、骨に変身したらそれでよかったんじゃないか?」
「骨になったらお菓子食べられないじゃない」
それもそうか。
「という訳で、『トリック、オア、トリート』」
マイが僕の方に来て手を差し出す。ん、お菓子をくれと言うのか?けど、残念な事に収納の中にはお菓子は無い。と言う事はマイに悪戯される?
「お菓子もってないのですね、どういうイタズラしましょうかねー?」
リアルカボチャ頭が近づいてくるのをカボチャを掴んで阻止する。こいつのイタズラは間違いないセクハラ系のにおいがする。
「こちょ、こちょ、こちょ」
「ウッハハハハハハッ」
いかん、僕はくすぐりに弱いのだ。しかもマイはくすぐりマイスターだ。
「参戦っ!」
カボチャからも手を離してしまう。
「カハッ、止めてっ、止めてくれっ!」
しばらくやられて、僕は涙目でもう少しで窒息しそうだった。ハロウィンの時はお菓子を持っとく。僕は心に刻んだ。