ゼロレンジバトル再び(頭突き編)
走り書いたので、後で修正します。
「先日、酒場で乱闘に巻き込まれ問題は無かったのですが、机や椅子がごちゃごちゃある狭い中では洗練された格闘術の無力さを悟りました」
道着を纏ったデルが憂いを含んだ表情で語る。1つにまとめたサラサラの金髪にまるで宝石のような目。傾国と言っても過剰ではない美貌だ。まるで神話や絵本の中から飛び出して来たみたいだけど、語っているのは愛の囁きなどではなく、無骨な格闘についてだ。
今日はデル先生の格闘技講座。メンバーはいつメン、僕、マイ、アン、黒エルフのレリーフに子供族のパムだ。
今日の場所は森の中、太い木が入り組んでいる。さっきデルが言った狭い中を再現しているのだろう。
準備体操、柔軟体操、気本練習の後、デルは語り始めた。
「私たち4人で乱闘を収めたんですが、その時のエースがルル。1番戦闘技術が拙い、喧嘩殺法が1番有効でした。私は慢心してました。綺麗に戦おうとしてました。けど、必要なのは結果です。泥臭くても見苦しくても勝てば正義です」
ん、今日は一段と長いな。それにしてもルルすげぇな。少女冒険者4人の他メンバー、狂戦士のアンジュ、素手ゴロ最強の神官戦士ミカ、格闘女王デルを差し置いて乱闘を制するとは。
「はいっ。それで、デル先生が言うほど泥臭い戦い方ってどんなのだったのですか?」
マイが手を上げて質問する。この講座中はデルの事をデル先生、または先生と呼ぶのが暗黙の了解となっている。
「ルルの十八番は頭突きです」
「え、頭突き?」
ついマイがオウム返す。僕の頭にもルルが頭突きを放ちまくる画像が浮かぶ。むつけき男どもを頭突きで沈めていく、巨乳美少女。シュールだ。けど、見てみたい。めっちゃ胸が揺れてそうだ。
「はい、頭突きです。髪を掴んで一撃、腕を掴んで一撃、胸ぐらを掴んで一撃。どっからどう見てもチンピラや輩です」
デルは一回溜息をつく。
「と言う訳で今日は頭突き講座です。まずは頭突きで使うのは額。髪の毛の生え際くらいが1番固いと言われてます。皆さんも後で森の木で自分の1番固いベストポジションを探してみて下さい」
探さねーよ。というツッコミをなんとか呑み込む。1人で森の木に頭突きって自傷行為かよ。
「狙うのは相手の鼻かその上の眉と眉の間の印堂という急所です。因みに鼻は三角と言う名の急所です」
へー印堂って言うのか。昔僕がアンを一撃で仕留めた急所だ。
「では、レリーフ前に出て下さい」
良かった、今日は実験台はレリーフだ。
「まずは両腕を上から掴みます。この時に上腕二頭筋の継ぎ目にある急所に親指を入れられたらモアベターです」
「ひうっ」
両腕を掴まれたレリーフが軽く悲鳴を上げる。多分両腕はもう使い物にならないな。
「それで、頭突きのコツですが、首はしっかり固定して、腹直筋に力を入れて放ちます。私の師匠がよく言ってました。『頭突きは腹で打て』と」
そう言って、デルはレリーフを引き寄せ頭突きを放つ。お、今日は寸止めだ。そしてレリーフは解放されるが両腕はダラリと下がっている。相変わらず、デルだけはやべー。
レリーフを癒したあと僕らは頭突きの練習に精を出した。
「頭突きって使いやすいですね!」
アンが嬉々として練習していた。頭突きドラゴン誕生の瞬間だった。