第五十六話 荷物持ち冒険者に会う
ご指摘がありまして、私もその方がいいと思い、ドラゴンのアイローンボーの愛称をアイからアンに変更しました。ありがとうございます。
「アイ、ちょっと待て」
僕はアイを呼び止める。
「どうしたの?」
「どうしました? ご主人様」
アイとマイが振り返る。
「俺はアイを呼んだんだが?」
「え、確かにザップ、あたしを呼んだわよ?」
もしかしたら間違えたかも、それか滑舌が悪かったのかも?
「アイロ、アイロン、アイボ、アイン、アン」
僕は呟く。
「どうしたのザップ?」
マイが振り返る。
「マイとアイだと呼び方が似ていすぎて間違える」
「そっか、あたしたちは間違えようがないからね。今の中ならアンがいいんじゃないの?」
「アイちゃん、今後はアンちゃんで大丈夫?」
「私は問題ないですよ、本名を略した形ですし」
マイの鶴の一声でアイはアンに変更になった。
「それでだ、呼び止めたのは、まずは、アン、ドラゴンは許可無く禁止だ。あと、俺は最小限しか話さないから交渉はマイに任せる。俺は荷物持ち兼護衛という設定でいこう」
僕達は焚き火に近づいていく。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「こんばんわーっ!」
マイが明るい大きな声で挨拶する。
焚き火の横に幌馬車がつけてあって、五人の男女が火を囲んでいる。僕達を見て立ち上がる。
「こんばんわーっ!」
そのうちの一人の女性が挨拶を返してくる。
相手に警戒されないように、武器未装備をアピールするために両手を見せて僕達は立ち止まった。
火を囲んでる人たちは、しばらく話し合う。そして一人の青年が僕達の所にやってくる。剣を帯び、硬そうな皮の鎧を着ている。
「こんばんは、挨拶が遅れてすまない。俺の名はポルト。冒険者だ」
ピカピカの皮の鎧に新品の剣。駆け出しの冒険者だと思うが身だしなみがいい。僕とは天と地の差だ。多分貴族の出だろう。
「あたしの名前は、マイ、旅人よ。あと、こっちはアンとザップ」
「やぁ、初めましてマイ、アン。それにしてもお二人とも綺麗だ。こんな荒野を護衛無しで旅するのは危険だよ。よろしかったら、もし街に行くのだったらご一緒しませんか?」
何か言葉使いが変だ。無理して粗野ぶろうとしてるのか?
「護衛はザップがいるわ」
マイは不機嫌そうに答える。
「すまない、ザップ君。悪気はないんだ。ただの荷物持ちかと勘違いしたよ」
ポルトは僕に頭を下げる。こいついい奴だな、冒険者にしては礼儀を知っている。けど、冒険者としては失格だな、多分護衛の仕事を受けてると思うのだが、護衛対象の依頼主の許可無く得体の知れない者と同行しようとするのはよろしくない。
「立ち話もなんだから、火の方へ行こう」
僕らはポルトと名乗った男の後に続いた。