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 裸で竜を刈る男 (後編)


「奥に進む」


 迷宮で起きて食事を終わると、ザップは渋面を作りながら口を開いた。


 ここは迷宮の中の噴水がある部屋。あたし達はなんとかミノタウロス王を倒したあと、ここにあるエリクサーの泉でなんとか生きながらえた。


「え、ザップ、何言ってるの?」


 たしか言ってたはず。ザップは奥にドラゴンがいるって……


「ブレスをもらう」


 ブレスってたしか神官の人とかが使う魔法にそんなのがあったような?


「何? 意味がわかんない? もしかしてドラゴンと戦うつもりなの?」


「ドラゴンを挑発して、ブレスを収納に入れる。ドラゴンが入って来れない通路でやるから安全だ!」


 安全? そんな訳無い。あたしは、もう絶対ザップから目は離さない!


「ザップの安全は信用できない! あたしもついていく!」


 あたしは腹の底から声を張る。何がなんでもついていく!


「ついてきてもいいが、熱いぞ、それに、服も髪も眉も全身の毛が燃え尽きるぞ!」


「え!」


 そう言えばザップの髪の毛の先は少し縮れている所もある。丸坊主から伸びたような髪型だけどもしかして燃えたの?

 あたしは自分の毛が無くなった所を想像する。髪の毛が無く、眉毛、睫毛、猫耳の毛、全てが無い。無理だ怖くて想像さえも出来ない。しかも全裸。無理無理、そんな所ザップ見られたらあたしは間違いなく恥ずかしさで悶え死んでしまう。

 あたしは頭を触って自分の髪の毛を確かめる。ショートならまだしも坊主は無理だ。

 しょぅが無い。ついていくのは今回は諦めよう。そうだ、なんかあったらすぐに走って行けばいい。


「わかった……まってる……」


「もし、熱くなりすぎたら、泉に潜れ。それでも駄目なときは広間に行け」


 ザップはあたしに背を向ける。途端にそのマントと腰巻きが消失する。え、何、何でこの人全裸になったの?


「キャッ! ザップ! あたしだって女の子なんだよ!」


「行ってくる!」


「が、がんばってね……」


 ザップは振り返る。あたしは顔を手で隠したけど、ついつい隙間から見てしまう。だって女の子だもん。


 そしてザップは扉を開けて出て行った。あたしの心臓は痛い程暴れていた。ザップを心配してなのか、初めて大人の男の人の裸を見たからなのかは解らなかった。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「ええーっ、ドラゴン相手に全裸ですか? 全裸!」


 デュパンが大袈裟に驚く。そりゃそうよね、ザップの所業は豪胆を通りこして、狂気すら感じる。あたしには絶対無理だ。


「そうですか……私が間違ってました。ドラゴン如き裸で倒せとの事なのですね」


 黒エルフのレリーフがタンクトップを脱いで筋骨隆々の上半身を露わにする。いけないわ、この人はザップにかなり毒されてたのを忘れてた。けど、脱いだのは上だけなのでザップよりはまだマシだ。なんか筋肉をピクピクさせている。もしかしてこの人、脱ぎたかっただけじゃ?


「そうですか、それは難易度が高いですね。けど、やるしかないですね。パム、収納にしまってて下さい」


 聖戦士のジニーが鎧を脱ぎ始める。ん、なんか違うような? 認識のズレを感じる。


「待って、待って、あなた達何か勘違いしてない? あたしはただみんなが緊張してるから、ドラゴン相手に裸で特攻したお馬鹿がいたって話をしただけよ」


「え、という事は、裸でドラゴンを倒せって命令された訳ではないのですね?」


 パムが目をまん丸にしてあたしを見る。あたしは鬼畜じゃないっつーの。


 そして、しばらく話をしていい感じに緊張がほぐれたと思う。


 『地獄の愚者』のメンバーが出発してしばらくしてザップは現れた。そしてあたしたちは食材を買い出して家に帰った。


 あとで聞いた話だけど、『地獄の愚者』達は無事ドラゴンを倒したけど、ジニーちゃん言うには、男共全員パンツ一丁でドラゴンに立ち向かったらしい。男の子ってば本当に訳わかんないわ……


 歯医者さんに行って来ました。


 読んでいただき誠にありがとうございます。


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