マイとアンと勇者アレフ
第一部、70話『荷物持ち立ち向かう』のマイSIDEです。書きたいなーと思ってましたが改稿してて思い出しました。
「まて、ザップは俺の獲物だ、黙って見とけよ」
王城の応接室が静寂に包まれる。さっきあたしを突き飛ばした金髪のいけ好かない奴が剣を抜いた。あたしはザップの背中ごしにそれを見る。周りの目がその光景に吸いこまれている。
あいつは頭大丈夫だろうか?ザップが仲間になるのを断っただけで何で剣を抜くのか?
誰かが走り出した足音がする。騒ぎを収めるために騎士でも呼びに行ったのだろう。
けど、あたしはさっき金髪に突き飛ばされたから判る。こいつは大した事無い。あたしのザップが負ける訳が無い。
「アンちゃん、残り3人はあたしたちがやるわよ」
隣のアンちゃんに小声で指示を出す。
「はい、マイ姉様」
アンちゃんもあたしにしか聞こえない様に小声で返す。
金髪男の振り上げた剣が光を放ち始める。場違いながら少し綺麗だとおもってしまった。あれって魔剣?生まれて初めて見た。
「え……」
あたしの口から無意識に声が漏れる。
金髪の剣は振り下ろされていて、微動だにしないザップの立っている床にポタリポタリと血がしたたり落ちる。床に赤い水たまりが出来ていく。何が起こったのか思考が追いつかない。ズンと胸の奥になにかが響く。声を出すことも出来ない。
ぐらりとザップの体が傾き、あたしは咄嗟に飛び出す。なんとか間に合い、ザップの体を支えゆっくりと横たわらせる。ザップの胸の所が大きく切り裂かれ血が溢れている。ザップの目は閉じているが呼吸はしているようだ。良かった。けど、早く治療しないと。
「娘、邪魔だ。どけ」
金髪が近づいて来る。あたしはザップの前に立つ。ザップを守らないと。
「嫌よ、ザップをどうする気?」
「こいつは俺の命を狙った。首を刎ねる」
「えっ……」
この金髪は何を言ってるんだろう。いつザップがあいつの命を狙った?ただ要求を拒絶しただけなのに。なんでそれだけでザップを殺そうとするのだろう。
あたしは考える。なんであんなに強いザップが一撃で?それになんで目を覚まさないの?それに首を刎ねるならさっきも出来たはず。判らない事が多すぎる。まずはとにかく時間を稼がないと。城の衛兵とか騎士とかが来たら、いくらこいつでもザップを殺したりはしないだろう。けど、早くザップを治療しないと。
「ここは王様の城よ、ここで人殺ししてもいいの?」
あたしは金髪の目をじっと見る。
「ああ、王の命を狙う曲者は退治しないとな」
やっぱあいつおかしい。いつの間にかザップが反逆者になってる。しかも金髪はまた剣を振り上げる。
ドタドタドタドタドタドタッ
「勇者殿?なにが起こったのですか?」
野太い男性の声が後ろからする。良かった騎士かなんかが来たみたい。金属の擦れる音、あと足音の数からして結構な数だと思われる。確認したいけど、あたしは金髪から目が離せない。
「反逆者を誅殺する」
金髪は来訪者を一瞥もせずに視線をザップに移す。駄目だ。ザップを殺す気だ。また金髪の剣が光り始める。嫌だ、あたしはまだ十分にザップに恩返ししきれてない。何があってもザップを守る!
「アンちゃん、ザップを守るわ!」
「はい!マイ姉様!」
あたしとアンちゃんはザップの前に立ち塞がった。
「命がけでこいつを庇うのか?ま、いっか、いつでもやれるしな」
金髪がそう言うと、その剣が光りその後の事は覚えていない。
あたし達がザップを守れた事を知ったのはこの後の事だ。
ザップは気付いて無いですが、実はマイ達に助けられてたという話です。
読んでいただきありがとうございます。
みやびからのお願いです。
「面白かった」「続きが気になる」などと思っていただけたら、
広告の下の☆☆☆☆☆の評価や、
ブックマークの登録お願いします。
とっても執筆の励みになりますので、よろしくお願いします。