第五十五話 荷物持ちからかう
「あ、あたしにも見えてきた」
マイが指してると思われる方にチラチラ光が見える。僕の横にマイがいるのだが、暗くてかろうじてその顔が見える。
「多分、数人で野営の準備をしているように見えますね」
「アイちゃん凄いわね、全く見えないわ」
僕達も目はいい方のはずだけど、アイは破格だな。
「ご主人様、こういうのはどうでしょうか」
アイのコロコロとした、嬉しそうな声が無音の荒野に響く。
「まずは、私がドラゴンになって軽く挨拶する。そして、落ちている荷物を拾う。落ちてる物を拾うのは犯罪じゃないですよね!」
「却下だな。それを人は野盗というんだ……」
アイにはもっと人としての倫理的な教育が必要だな……
「それでは、こういうのはいかがでしょうか?」
また、きっと、ろくなもんじゃないだろう。
「まずは、私がドラゴンになる」
「アイ、いい加減ドラゴンから離れようか」
なんか、結果が解るような気がして、アイを遮る。
「まぁ、まずは聞いて下さいよ、ドラゴンになった私が走って行きます。そして、あそこの人達の所で軽く吠えます。そこでご主人様の登場です」
「ここからは、あたしでも解るわ! ドラゴンの前に颯爽と現れたザップはこう言うのね、『大丈夫か君たち! ここは私にまかせろ!』と」
マイが割り込んでくる。やはり、八百長のマッチポンプか……
「そうです、そうです」
アイが相づちをうつ。
「そして、現れたザップは一撃の下に邪悪なドラゴンを討伐するのね。そして、あたしはザップの所に走って行って抱きついてこう言うわ『ザップ凄いわ! これで世界も平和になるのね!』そして、ザップはドラゴンスレイヤーの称号と褒賞金を貰ってあたしたちは末長く仲睦まじく暮らしていくわ! ありがとうアイちゃん」
なんか、場末の三文芝居みたいだな……
「そいつはいいな称号と褒賞金か。マイと末長く暮らす以外は。俺にはやることがあるからな」
「ええーっ! ザップのケチ! おたんこなす!」
おたんこなすってなんなんだ? 今日び聞かないな。
「それで、私はどうなるのですか?」
「多分解体された後、どっかにドラゴンの貴重な骨格標本として大事に保管されることになると思うわ。有名にもなれるし大勢の人に夢と希望を与える事が出来るはずよ」
「夢と希望! いい言葉ですね。解体されるのはなんか嫌ですが、ご主人様のためならば、このアイローンボー文字通り粉骨砕身頑張ってみせます!」
いかん、まじだこいつはやる気だ。
「すまん。冗談だやめろ!」
「ご主人様、なにむきになってるんですか、冗談ですよ、単純なのですから。いくら私でも標本は勘弁ですよ、もっと美味しいもの食べたいですし」
「グッ……」
からかってたつもりがからかわれてたのか……なんか釈然としない。
前にある光の周りの詳細が見えてきた。焚き火と馬車と人影が僕の目でも確認できる。
みやびからのお願いです。
「面白かった!」「続きが気になる!」などと思っていただけたら、
広告の下の☆☆☆☆☆の評価や、
ブックマークの登録お願いします。
執筆の励みになりますので、よろしくお願いします。