肘砕き、膝砕き
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「今日の技は複合技です」
刷毛ではいたような淡い雲が空高くたなびく青空の下、エルフのデルは口を開く。
道着姿のその横にはウッドゴーレムがいる。今日は会った時からデルは道着だった。しかもゴーレム君を引き連れていた。彼女は最近は迷宮都市を宿としてるので、そこからやって来たと思うのだが、道着でウッドゴーレムを引き連れたその姿はとっても人々に強い印象を与えたのではないだろうか?それにデルは美人さんだからさらに悪目立ちした事だろう。
人は強さと引き換えに羞恥心を失うものなのだろうか?
僕の周りの強者と言われる者は、人の目を全く気にしない者ばかりだ。魔王リナ、ドラゴンのアンなど思い浮かぶ存在自体が恥ずかしくなるような面々。デルとかは出会った時は普通だったと思うのだが、強さと共に破天荒スキルを手に入れていった気がする。
否!
そうだ。僕はそこそこ強いはずだけど、恥ずかしがりやさんだ!
羞恥心は強さによって失われるものでは無く、彼女たち自身の問題だ。
無駄に思考加速で考えていると、デルが再び口を開いた。
「突き蹴りなどの打撃の剛の技、投げ締め極めなどの柔の技。どうしても別々に考えるがちですが、それらを複合すると更なる効果を発揮できます。今日は関節砕き、関節を破壊するという柔の考え方を打撃で実践します」
今日もいつメン、僕、マイ、アン、黒エルフのマッスルレリーフと、子供族のパムだ。そう言えばこのデル先生の格闘技講座の出席率たけーな、欠席者を見た事が無い。
「ではよーく見てて下さい」
デルと連れて来たゴーレム君が対峙する。
「まずは肘砕き、相手の攻撃を流しながら手首を押さえ、肘関節の可動するところのちょうど裏から何かしらの打撃を与えます。相手の肘をしっかり伸ばす事とちょうど裏から打つのがコツです」
ゴーレムの右ストレートをデルは右手で受けながらゴーレムの手を捻り、その肘にフックを放つ。
ぽきゅ!
簡単にゴーレムの肘は逆方向を向いている。
「次は膝砕き、相手の膝が伸びた瞬間に綺麗に真正面から膝を押し込む様に蹴ります」
ぼきゅ!
デルが踏みつけたゴーレムの膝が簡単に後ろに曲がる。
「どちらとも真っ直ぐ伸びた瞬間を狙って下さい。思ったよりも小さな力で破壊できます」
ゴーレム君は後ずさりたたらを踏むと、後ろに倒れもがき続ける。可哀相だ。今日はゴーレム君がいた理由を悟る。あれを喰らったら痛いなんてもんじゃない!
「デル先生、やり過ぎ感がハンパないんですけど、どういう時に役立つんですか?」
パムが口を開く。彼はこの中で1番の弱者だ。弱い者程良識があるというさっきの仮説が頭をよぎる。
「それはですね、今みたいなゴーレムとか、アンデッドとか頭を潰しても動けなくなるまで戦う者に対して便利です」
確かにその通りだと思う。思ったよりも良識的な答えがかえってきて良かった。
そしてその後僕らはゴーレム君を修復して練習に励んだ。少しゴーレム君が可哀相だった。
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