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 鏡


「ザップー、30分たったわよ」


 マイが僕の肩をポンポンする。視界の隅にはアンと妖精ミネアと忍者ピオンが仲良くお昼寝している。


「ああ」

 

 木漏れ日の中で石に腰掛け読書の秋をしてた僕は、立ち上がり目の前の洞窟に向かう。洞窟を少し進むと土砂で出来た壁が有り、上の方からチョロチョロと数ヵ所水が出ている。

 今日、僕達はゴブリンが大量発生していると言う大きな洞窟に来ている。何匹いるか判らないがかなりの数がいるらしく、面倒くさいので水攻めした所だ。もしかしたら捕虜とかがいるかもしれないので、妖精ミネアの不可視の魔法をかけたミネアと忍者ピオンに内部を確認してもらい、入り口を収納で持ってきた土砂で封鎖して、収納に入れてた大量の水を流し込んでやった。大事をとって30分熟成させ今から開放だ。

 土砂と水を収納に戻す。


「ザップー、すぐ終わるでしょ、じゃ、あたしご飯の用意しとくわ」


 マイは洞窟から出る。まあ、その通り。あとは洞窟の中のゴブリンの死骸とかを収納に入れ、面倒くさいのでそのまま納品する予定だ。ゴブリンの討伐確認は切ったゴブリンの右耳でされるけど、今回はギルドにそのまま納品するという形で依頼を受けた。

 1人で来て良かったと思う。溺死したゴブリンの表情はそれはひどいものだった。松明を手に、何も考えず走りながら最短のルートで死骸を回収していく。全ての部屋を回り、なんだかんだ全てを収納に入れて行く。最奥の部屋にはひときわ大きいゴブリンの死骸があり、それも回収する。

 部屋の奥には祭壇があり、なんかキラキラしたものが見える。


「鏡?」


 等身大の鏡で僕は松明をかざし覗き込む。


 ゴブリン?ゴブリンがこっちを見ている。しかもだぼだぼの服、よく見ると僕のを着て松明を手にしている。映した者がゴブリンに見える鏡なのか?

 僕はペタペタ顔を触ってみる。ん、耳とがってるな?


「ぎゃぎゃーっ!」


 奇声を上げてしまう。僕、ゴブリンになってるよ。

 という事はもしかして、僕が溺死させたゴブリンの中にはこの鏡で変化させられた人間もいたのか?いや、その可能性は低いだろう。この近辺ではまだ犠牲者は出てないとの事だ。

 けど、どうするか?取り敢えず収納を使おうとするが機能しない。

 落ち着け、落ち着け。

 時間が経ったら戻るのか?それは無いだろう。ここにはゴブリンしか居なかったし、その中にも変化した者もいただろう。

 そう言えば、喋るゴブリンもいたな。


「ギャップ・ギュッジョジェロー」


 むう、『ザップ・グッドフェロー』って言ったけど滑舌悪すぎるだろ。こりゃ会話出来なさそうだ。

 まあ、けどマイ達は馬鹿じゃないから、このまま万歳しなが外に出たら、僕が呪いかなんかでゴブリンになったのが判るはずだ。そして、ミネアの魔法なら解除出来るだろう。僕は袖と裾を捲ってベルトを締め直し理知的に見えるようにして入り口に向かった。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「ゴブリン!」


 両手を上げて降伏のポーズを取りながら洞窟を出たら迎えたのはマイだった。


「ん、ザップの服着てる、もしかして」


 さすがマイ、天使だ。姿が変わっても僕の事を……


「マイ姉さん、下がって下さい。なんて下品な顔のゴブリンでしょう。ああ、まさかご主人様がゴブリンなんかにやられて身ぐるみ剥がれてしまうとは……」


 アンが大仰な身振り手振りを交え僕とマイの間に割り込む。むっ、こいつさっきまで寝てたのに飯の匂いで起きたのか?それにこいつ明らかに僕だって気付いているだろう。


「ザップを倒したゴブリン。私が倒す。アンさん、任せて下さい」


 更にその前に忍者ピオンが割り込む。無表情のピオンの口角が間違いない上がっている。気付いているよね。間違いなく。


「ちょっと待ってあんたたち」


 マイが僕を庇うように立つ。頑張れマイ!


「ご主人様を倒すような奴です。ピオン、同時にいきますよ!日頃の恨みっ!」


 うっ下克上か?最近アンを虐め過ぎたか?って間違い無く気付いているよね?


「はい、判りました。ザップ覚悟!」


 もう、ピオンはザップって言ってるし……


 僕は洞窟の中に逃げ込んで、ゲリラ戦でいいとこまで追い詰める事は出来たけど、所詮ゴブリン。2人に見事にボコられた。くやしい!


 そしてその後、ミネアの魔法で元に戻り、心置きなくドラゴンと忍者をお仕置きしてやった。

 ちなみに鏡は導師ジブルに渡して魔改造してもらっている。

 

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