第五十四話 荷物持ち星空の下歩く
「ねぇザップ、いつまで歩くの?」
マイが隣に来る。そう言えば、さっきも同じ事聞かれたような?
歩き方からして疲れてるようには見えない。休憩して何をしたいのだろうか?
飯もさっき食べたばかりだし。
「マイ、休みたいのか?」
「そういう訳ではないけど、そろそろ、休む準備しないと、それに焚き火する薪もないから、今日は、その、あの、ザップが体壊したらいけないから、あたし体温高いと思うし……それに寒いし……」
要は寒いから一緒に寝たいと言うことか……
ん、おかしいな、さっきマイは寒さに強いって言ってた気がするが?
最近、マイは事あるごとに、寝てる時だけでなくいつでも理由をつけて僕に抱きつこうとしてるような気がする。年頃の女の子なので勘弁して欲しいものである。
僕の今の目的は僕をゴミのように捨てた大陸屈指の冒険者パーティー『ゴールデンウィンド』を見返してやる事だ。
それ以外は考えられない。もっとも、寄り道ばかりしてるけど……
可能ならば今よりももっと強くなって、あいつらをぶっ倒せるようになりたいものだ。
僕達は今3人で街道を歩いている訳だが、この道には轍があり、直近に馬車が通った跡がある。このまま歩けば、うまくいったら野営している者に出会えるのでは? そう期待を持って歩いている。
そして出会った者に僕らが持つ物を売って、街への通行料を手に入れるつもりだ。そんなに都合よく行くわけはないが、このまま行けば街道なので、どっかで人には遭遇するだろう。
満天の星の下、僕らは歩いている。月が出てないので、足下に気をつけて歩く。こうやって星を見るのは久しぶりの気がする。子供の頃はよく眺めてたな。
「ご主人様!」
急に僕の前にアイが飛び出す。ぶつかりそうになり、たたらを踏むが何とかかわす。
危なかった!
あと少しでアイの際どい所を触りそうになった。気を付けないと、今こいつの服は幻で裸だからな。僕も男だから興味がない事はないが、マイがとても怖い。
「おいおい、ぶつかると危ないだろ」
「えっ、私は頑丈だから大丈夫ですよ」
正直、そういう問題ではないのだが……
「それより、どうかしたのか?」
「見て下さい、焚き火が見えます。誰か野営してますね」
目を凝らすがなにも見えない。
「何も見えないわ。アイちゃん目がいいからね。どうするザップー?」
「行ってみよう。アイたのむ」
「了解しました。ご主人様」
アイを先頭に進んでいく。アイとぶつからないように僕は最後尾だ。