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第五十三話 荷物持ち触る


 歩きながら迷宮生活を思い出す。


 深層にもなると迷宮内は一定の温度だったので、寝るときはミノタウロスの腰巻き数枚に包まるだけでよかった。けど、床が固いのはどうしようもなかったが。


 地上の夜は冷える。そんな当たり前のことを僕は忘れていた。寒い……

 収納からミノタウロスの腰巻きを数枚出して包まる。


 僕達が今歩いている街道の辺りは乾燥して低い草しか生えて無く、所々に岩が露出しているいわゆる痩せた大地だ。

 薪になるようなものが見当たらない。辺りは日が落ち始めたが、暖を取る方法が思いつかず無言で歩いている。


「ザップ、いつまで歩くの?」


 マイは体が冷えないのだろうか? 結構薄着だと思うが。


「マイ、寒くないのか?」


 収納から腰巻きを出してやろうかと思い立ち止まる。


「全然。あたしは寒いのには強いけど、暑いのはだめなのよ。寒いのは着ればしのげるけど、暑いのは脱いでも暑いから」


 マイは耳をぴこぴこ動かす。至って元気だ。

 そう言う人はよくいるが、僕はそうは思わない。暑いのは我慢で何とかなるが、寒いのは我慢しても寒い。下手したら凍えて死にそうになる。好き嫌いの問題だと思うけど、僕は寒い方が嫌だ。


「ん、ご主人様、寒いのですか? 私は昼と全く気温が変わってない気がするのですが?」


 アイは論外だな、炎のブレスを吐くような奴だ。寒暖差についてはかなり鈍いのだろう。一番薄着だし、それ以前に魔法か何かで出してるその服は保温効果は有るのだろうか?


「アイ、その服は暖かいのか?」


「そうですね、服のどこか触ってみて下さい」


 そうは言われても、アイの見た目は女の子だ。しかもノースリーブだ。服のどこを触ればいいのだ?


 視線を感じる。マイが僕を凝視している。選択を間違うと危険な香りがする。


 ままよ!


 僕はアイの服の腹の所を指でつつこうとする。


「キャッ、くすぐったいですよ! ご主人様……」


 指は服を突き抜けひんやりとした柔らかいものに触れた。僕は熱いものを触った時のように反射的に手を引く。


 辺りの空気がさらに冷たくなった気がする。


「なかよし、な・の・ね」


 マイが微笑んで僕を見る。その目はギラギラしてる。決して笑ってない。


「マイ、お前も見ただろう、指が突き抜けたんだ!」


「そんな事あるわけないでしょ!」


 マイは無造作にアイの胸に手を伸ばす。  


 マイの手が服の中に埋もれる。あ、もみもみしてる。


「アイちゃん! 説明して!」


「あ、あの、手を離して欲しいです……」


 アイは顔を赤らめてうつむく。


「ごめんなさい」


 マイは弾かれるように手を引く。


「あのですねー、この服、魔力で出来てるので、実体がないんですよ」


「あのね、アイちゃん、女の子なんだからせめて下着はつけなさい」


「おいおい、それよりも、要はお前裸で歩いてるのか?」


 なにっ、なんて不屈なメンタルなんだ!さすがドラゴン、僕には逆立ちしても無理だ。


「はい、そういうことになりますね、意識がない時には無くなりますし」


 気づかなかった、寝るときはみんな腰巻きにくるまってたしな。よもや、僕より軽装だったとは。

 まあ、ドラゴンだし仕方ないか。服を着てるドラゴンなんて聞いた事無いもんな。社会常識を教えないと……


 協議の結果、服を手に入れる事。それが僕達の最優先事項になった。

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