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 茸狩り


「キノコ、キノコをみんなで食べましょう!」


 ドラゴンの化身アンは立ち上がると拳を握りしめて芝居がかったセリフをはく。往来で大声は止めて欲しい。しかもなんて頭が悪そうな言葉だろうか。歩いている人が振り返って可愛そうなものを見る目で僕達を見ている。このドラゴン娘には羞恥心というものが全くない。結構そういう事を気にしない僕がそう思うのでたいしたものだ。僕は今までの人生で『キノコを食べましょう』と大声で言ってる人を見た事がない。しかも、『みんなで』という言葉で僕達も巻き込んでいる。


「アンちゃん、もっと小さな声で話ましょう」


 少し顔を赤くしたマイがアンをたしなめる。マイは僕達の中で1番の良識人だ。


 ちなみに僕達はなんか仕事しようと冒険者ギルドに向かってる所で、マイが秋の味覚といえば的な話をしてた所だ。


「え、なんでですか?」


「もぅ、注目されたら恥ずかしでしょ」


「人の目なんてどうでもいいじゃないですか。秋と言えばキノコ。私の頭の中はキノコでいっぱいです。もうキノコの事しか考えられません。キノコ、キノコをいっぱい食べたいですぅー!」


 アンはわざとらしくさらに声を張る。マイが恥じらってるのを見て、さらにアンは加速する。いつもマイにマウント取られているからその意趣返しか?ここは大通りなので周りの人々が注目している。キノコキノコ叫ぶ美少女に、恥じらってる美少女、それに僕。周りから見たら僕は今どんな風に見えているのだろうか……


「もう!大っきいキノコを好きなだけ食べさせてあげるわよ!」


 その空気に我慢出来なくなってしまったマイがアンの手を引っ張って走って行った。なんか、誤解されそうな事言ってたけど、アンと違ってマイは自覚ないんだろうな。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 僕達の前にはキノコの山がある。朝から半日かけて山の中で取りまくったものだ。まだ秋には早いのに沢山採れたものだ。


「キノコ狩りのプロでさえ、毎年毒キノコを食べて亡くなってる方もいるというわ。それほどキノコの目利きは難しいのよ」


 マイがニヤリと笑う。


「けど、なんと、あたしには鑑定のスキルがありまーす。なんと鑑定スキルでは可食非可食、美味しいか美味しくないかわかるのでーす!」


 なんかマイがテンション高くてウザイ。もしかしてキノコ好物なのか?


 それにしても鑑定でそんな事も解るのか。戦闘スキルじゃないからどうでもいいと思っていたけど、もったいない事したかもな。けど、マイが喜んでるからいいか。


「では、あたしの鑑定で、キノコを仕分けたいと思いまーす」


 なんか鑑定持ち上げすぎだろ。


「おいおい、鑑定しなくても大丈夫だろ」


 僕は特にでっかくケバケバしい色をしたキノコを手にする。キノコは一応生でも食えるし、もし毒があったらエリクサーだ。荷物持ちなめんなよ!


「ザップ、待って!」


 僕は男らしくキノコを貪ってやる。けどやっぱ火を入れた方が美味しい。カビみたいな風味がある。


 フッ。当たりだほらなんともない。


 なんだありゃ、遠くから沢山のピンクの豚が歩いてくる。視界がぐるぐる回る。沢山の豚が僕を囲んでフゴフゴいっている。ありぇーなんだこりゃー……




「ザップ、よりにもよって1番幻覚作用が強いの選ぶなんて……」


 マイの声がする。


「ご主人様、キノコは焼いた方が美味しいですよ」


 アンの声もする。うん、それはさっき身に染みて学んだ。


 グラグラする頭を起こし目を空けると二匹の豚が僕をのぞき込んでいる。


「ブタぁ?」


「誰が豚よっ!」 


 僕の鳩尾に強力な一撃が……

  

 さっきまで豚だったものがマイにかわる。だめだこりゃ……


 ぼくがきょう学んだことは。怪しいキノコは口にしない事。


 キノコってとっても危険だな……


 

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