表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

514/2100

 肝試し


 オロロロロロロロウォオオオオン……


 古びて所々崩れ落ちた屋敷に、何言ってるのか全く解らない謎の声が響き渡る。


「キャー!来ないでーーーーっ!」


 マイがひっしと、いやガバッと僕の腕にしがみつく。その柔らかいものが押し付けられるが、それを楽しんでいる余裕が僕には無い。


 もげる、もげる、もげる。


 パニックなマイの力はやばく、僕の腕が持ってかれそうだ。なんか肩口あたりがブチブチ言っている。


「いてぇ、いてぇよマイ!」


「ごめんなさい、ごめんなさいザップ……」


 マイはハッとして僕から離れるが、時既に遅く、もはやぼくの左腕は死んでいる。痛みしか無く感覚が無い。プラプラしてる。マイじゃなかったら軽く必殺のワンパン入れてる所だ。


 オロロロロン……


 なんか謎の声を上げて視界に白い靄が現れる。そうだ、この声なんか聞いた事あると思ったら、酔っぱらいが戻してる時の声そのものだ。白い靄はゆらゆらと宙を舞い近付いてくる。断末魔に顔を歪めたような後ろが透けて見える全身白い男が、空中を漂いながらこっちへ向かってくる。


 ゴースト。死者の霊が強い怨嗟の思いか、死霊術士の秘術でアンデッドと化したもの。


「ザップ!来たわ!来たわ!」


 マイが涙でぐじゅぐじゅになった顔で僕に向かってくる。正直、泣いてるマイも可愛いと思ったが、命の危険を感じ僕はそれをひらりとかわす。正直ゴーストよりマイの方が恐ろしい。ゴーストごときは僕の腕をおしゃかにする事は出来ない。


「ザップ……置いてかないで」


 マイが捨てられた仔猫のような顔で僕を見る。言ってる事は若干脈絡無いが、そう言う顔をされると困る。一瞬、動きを止めてしまった。


 バキボキバキボキボキッ!


 これは鯖折り!正面から抱きついて来たマイが瞬時にして僕にとどめを刺す。やべぇ、こりゃ相撲で禁じ手になる訳だ。なんか激しい音したぞ、骨間違いなく何本かいってしまったのでは……


「マイ!来たぞ!」


「キャアアッ!」


 マイが出した魔法の収納のポータルから1本の剣が弾き出される。しかも白い光、聖気を纏っている。それは過たずゴーストの顔に当たり霧散させる。それは僕の技『剣の王』、僕よりも正確にさらに聖気追加というアレンジまで加えている。マイ恐るべし。


「マイ、離れてくれないか?」


「……うん……ごめんなさい……」


 僕は収納からエリクサーを出して自分に振りかける。ここまでダメージを負ったのは久しぶりだ……




 今日はドラゴンの化身アンの入れ知恵でゴースト討伐の依頼を受けた。


「私の読んだ雑誌によると、『肝試し』っていうレクレーションは、男女の絆を深めるらしいですよ。私、今日は用事あるのでマイ姉様と2人でアンデッド討伐でも行ってきたらどうですか?」


 アンの用事って言うのはろくな事では、ないと思うが、怯えるマイの前でアンデッドを刈りまくって格好いい所見せるのもいいなと思って、つい調子に乗ってしまった。ちなみにマイには依頼は建物に住んだ魔物退治と言っておいた。ゴーストも魔物なので嘘はついていない。


 僕の認識が甘かった。アンデッド系の依頼を受ける時はマイは連れて来ないようにしよう。僕がアンデッドになってしまう。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ