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第五十一話 荷物持ち村をたつ


「ウギャー!」


 ザナドゥが叫んでいる。元気だな、絶対そんなに痛くないはずだ。


 そろそろこの茶番にも飽きてきたので、アイに耳打ちする。


「ドラゴン解禁。本気で吠えろ」


 アイは後ろに大きく跳ぶと、一瞬光り膨れ上がり、そこには巨大なドラゴンが現れる。そして、大きく口を開ける。


「グオオオオオオオオオオアーッ!」


 ドラゴンの咆哮が辺りの空気を激しく震えさせる。これは少し威圧効果ありのやつだ。


 しばらく、アイは吠え続けた。


 今や大地に立ってるのは僕だけで、ゴブリン達は王もローブの奴も含めて全て気絶してるか、頭を抱えて震えあがっている。


「ド、ドラゴン……」


 ザナドゥが震えながらも首を上げてアイの巨体を見上げている。こいつ意外にタフでメンタル強いな。


 僕はとりあえず、全てのゴブリンをぶっ倒した。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「ザップ様、ありがとうございます。このご恩は一生忘れません」


 ザナドゥは大地に両手と頭をつけている。いわゆる土下座だ。凄い手のひら返しだ。人はこうも簡単に卑屈になれるものなのだろうか?


 あのあとすぐにドラゴンの咆哮を聞きつけたマイがやって来た。

 僕はそこまでしなくても、生きてるからいいだろうと思うのだが、マイが可哀想というので、ザナドゥ含む『ダンスマカブル』のメンバーにはヒールポーションを使った。誰か解らなかった顔も元通りになっている。


「ドラゴンはいなかった。見たのは幻覚だとこいつらにも言い含めろよ!」


 僕はマカブルの三人を指差す。拘束は解いてるが、三人仲良く気絶している。


「もし、ドラゴンの話をどっかで聞いたら、俺は何もしないが、彼女たちは何をするかわからんぞ!」


「ザップ! アイは置いとくとして、あたしは、か弱くて大人しいんだから!」


 首狩り族が何か言ってる。聞こえんな。


「わかりましたっ! ザップの兄貴っ! ドラゴンは幻覚! 誰にも話しませんっ!」


 話が解るようになったのはいいが、兄貴は止めてほしいものだ。気持ち悪い。


「これからは、弱い者いじめはするなよ!」


「はいっ! わかりましたっ兄貴っ!」


 僕達は、ザナドゥたちを置いて村に向かった。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「本当にありがとう。助かった。また、そばに来たら寄ってってくれ」


 酒場の主人の老人と握手している。


 なんと言うか、人に感謝されるのは慣れていないから面はゆい。僕らは酒場の主人に別れを告げてすぐに村にをたつことにした。三人で徹底的に殲滅したので、もう多分ゴブリンはいないだろう。いたとしても遠くへ逃げたはずだ。


「ああ、じゃあまたな」


 僕達は酒場を後にした。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「ありがとう。猿人間!」


 村の外れで、子供達が追っかけてきた。


 見たことのある三人は、上半身裸で首と腰になんか布を巻いている。もしかして僕を模してるのだろうか?


「猿人間、名前を教えてくれ!」


 僕の前に立ち塞がった奴が猿人間の格好で問いかけてくる。


「ザップだ」


「じゃあな! ザップまた来いよ!」


「ああ」


 僕らは村を後にした。村は貧しく今回で更に被害を受けたのでこれからは大変だろう。村人はなけなしのものを僕達に差し出そうとするが僕達は受け取らなかった。

 僕達は何も手に入れてないが、子供達にすこしは憧れて貰えたようだな。


 僕は少しあたたかい気持ちになった。


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