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 忍者2号(前編)


 わたしの名前はスパイダー。闇に潜み闇に生きる者。市井の者達は、畏怖を込めてわたし達をこう呼ぶ。


『忍者』


 間諜、暗殺などを生業なりわいとするものだが、特にわたしは暗殺に長け、闇に紛れ誰にも気付かれる事無く、東方伝来の忍術という魔技を駆使し、依頼された者を冷たきむくろに変えてきた。


滅闇ルーインダークネスのスパイダー』


 それがわたしの2つ名だ。いままで任務をしくじる事は無く、新進気鋭の暗殺者として盗賊都市に名前を轟かせていた。

 決して殺人を好んでいた訳ではないのだが、所属していた暗殺者ギルドに自爆の魔道具を埋め込まれていたので組織に逆らう事は出来なかった。


 けど、ザップ・グッドフェローという冒険者に初めて敗れ、しかもわたしの行動を縛っていた自爆の魔道具も解除してもらい、組織からは自由になった。


 しかも死んだと伝えられていた友人のピオンに住み込みの仕事を紹介して貰えるという僥倖にみまわれた。

 そして、その職場に連れて行かれた。冷酷非情なピオンのしている仕事だから、どんな悪徳で非合法なものだろうか? 殺人請負、麻薬の密売、裏金の強奪、どんな危険なものが待っているのか、わたしは武者震いをおさえながらそこに向かった。



「うわっ、あたしのお下がりでもえげつない事になってる。あんた乳デカすぎでしょ、何食べたらそんなにふっとくなるの?」


 わたし、『滅闇のスパイダー』は、やたらフリフリとしたメイド服を着させられている。

 なんだ? もしかして紹介される仕事は堅気に成りすますものなのか?

 わたしに話しかけているのはシャリーという名のやたら馴れ馴れしい小娘で、わたしの胸をたぷたぷしている。これはいつかわきまえさせてやるべきだとは思う。

 だが、ここではわたしは新入りだ。友人のピオンの事もあるからしばらくは大人しくしておこう。


「あ、パイ、準備出来た。紹介するから行こう」


 小柄な同じくメイド服を着た、わたしの友人ピオンがやって来た。


「ピオン、わたしの名前は『スパイダー』馴れ馴れしく略さないで」


「じゃあ、『スパ』がいいか?」


「ピオン、それは駄目よ、注文でスパゲッティが入ったときに紛らわしくなるわ。おっぱいでかいから『パイ』。すぐにお客さんに覚えてもらえるわ」


 シャリーという小娘がピオンに答える。自分も乳がデカい癖になに言ってるんだ? それに、それが嫌なんだ。仲間うちではすぐそうやってからかわれてた。やはりこの小娘はしめとくべきだろう。


「はい、シャリーさんわかりました」


 え、ピオンが簡単に折れてしかもへりくだっている。あの気位が高いピオンに何があったのだろうか?


 わたし達はシャリーについて行き、店の客室へ向かった。そこには赤い目の少女と、猫耳の獣人の女の子がいた。


「お待たせしました。はい、パイ、自己紹介して」


 ピオンがわたしを肘でつつく。面倒くさい。もうパイでいいか……


「わたしの名前は、パ、パイです……」


「パパイ?果物みたいな名前ね」


 どっからともなく妖精が飛んできた。わたしはしばし心奪われた。妖精って本当にいるんだ。か、可愛らしい……


「ミネアさん、パイです。パパイヤじゃないです。すみません。緊張してるみたいで」


 ピオンがわたしの頭を下げさせる。おかしい、ピオンがしおらしい。奴はギルドの幹部の前でもふてぶてしかったのに。ここは一発!


「わたしの名前はパイ。闇に紛れ闇に生きる暗殺が得意な忍者だ。とは言っても近接戦闘も得意だ。トロールを狩った事もある」


 少女達はまん丸とした目でわたしを見ている。やはりトロールが効いたのだろう。なんてったってトロールだからな!


「あたしはケイ、ピオンのライバルです」


 猫耳少女が軽く頭を下げる。何いってんだコイツ。ピオンのライバルに成れる訳無いだろ。あいつはわたしでも倒すのには手こずる。

 あ、そうか、店でのライバルなんだな。ピオンも可愛いけど、この娘も可愛い。うん、ある意味いいライバルだ。


「僕はラパン。トロールは凄いね。けど、安心して、ここはお店だから荒事は一切ないよ。なんか困った事があったらいつでも相談してね」


 赤目の美少女はそう言うと微笑んだ。女のわたしでも心惹かれてしまいそうだ。けど、トロールの事は信じて無さそうだな。まあ、普通そうか。

「相談してね」か、いいだろう、逆に困った事があったら力を貸してやる事にしよう。

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