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 好きな食べ物


「そう言えば、ザップの1番好きな食べ物って何なの?」


 マイが僕に問いかける。一瞬、マイが作る物なら何でもって答えそうになるけど、その言葉を飲み込む。なんか誰かに爆破されそうなセリフだ。

 難しい質問だ。僕は基本的に好き嫌いが無い。迷宮の底でくっさい血のしたたる生肉を食べてた事もあるので、大抵の物はとっても美味しく食べられる。


「私の大好物は肉です。特に牛肉、特にサーロインステーキが好きです!」


 ゴロゴロしていたドラゴンの化身アンが跳び起きて興奮している。こいつは食べ物の話になるととたんにテンション上がるな。さっきまでグテッとしていたくせに。


「それは知ってるわよ。いつも聞いてるわよ。けど、ステーキは昨日食べたばかりじゃない」


「ステーキは毎日食べても素晴らしいものです!」


「まぁ、そうだけど、あたしたちはドラゴンじゃないから毎日ステーキだとちょっとね……」


 マイはちょっと太ると言いたいのだろうか?僕的にはマイはもう少しぽっちゃりしてもいいと思うけど、怖いので口にはしない。


「私の大好きなものはイチゴです。うふっ!」


 見た目幼女、中身は肉食系女子の導師ジブルが堂々と嘘をついている。


「ジブル、この前確か焼いたイカが1番好きって言ってなかったか?酒飲みながら食べるイカ最高とか言ってたよな?」


「それは、お酒とセットならよ、私はイチゴやパンケーキが大好きって事にしてて。そうしたらやっぱ男の子うけいいでしょ、私もそろそろ彼氏が欲しいのよー!」


 そうか、彼氏が欲しいのか。今度、冒険者パーティー『フール・オン・ザ・ヘル』の男共を紹介してやろう。パムなどはジブルと同じ種族で性格属性も似てるからいい感じなのでは?


「ジブルがイチゴが好きって言うのは解ったわ。けど、イチゴじゃご飯は作れないわね。という訳で、ザップは何が1番好きなの?」


 マイが作るものなら何でもっていうのが無しなら、そうだなぁ……


 今まで食べたもので1番美味しかったものを思い出す。やっぱり『原始の迷宮』を彷徨ってまずい肉を食う日々のあと始めて口にした文明的な食事。マイが始めて作ってくれたスープが1番美味しかった。けど、なんかそれを口にするのは恥ずかしすぎる。


「そうだな、やっぱり1番好きだったのは、昔、妹が作ってくれていた、具材の少ないスープと固いパン。それかなぁ。毎日毎日疲れて帰って来た俺に一生懸命作ってくれてな。決して美味しいものではなかったけど、心がこもっていて、俺は毎日それが楽しみだった」


「ふーん、うっすいスープとかったいパンね……」


 ん、僕を見つめるマイの瞳に全く光が無い?


 その日の晩御飯は、ほぼ具材が無いスープと固いパンだった。スープはとっても美味しかったけど、パンはめちゃくちゃ固かった。言葉足らずだった。1番好きだったって言ったのに……


 

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