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 廃坑探索


 僕の名前はラパン・グロー。この名前は僕のいつもは働いてるお店『みみずくの横ばい亭』の主人のマリアさんがつけてくれたもので、本当の名前は別にあるのだけど、故郷に帰った時以外はこの名前で通している。確か源氏名って言うんだったかな?少し違う気がする。


 今日は冒険者ギルドで難易度が低そうな依頼をゲットしてきた。王都の近くの廃坑の探索だ。廃坑そばの村の子供達が、廃坑で遊んでいて奥から変な音がするのを聞いたらしく、その原因を探るという依頼だ。原因究明だけなので戦闘になる確立は低いと思うし、もし魔物とかに遭遇しても何が出たかの報告だけでいい。要はチョロい依頼だ。報酬も安いけど、ピクニック気分だ。


 僕達は王都の北の山の中腹にあるという廃坑に向かう。街道を通り坂道を登り寂れた村に着く。道も大きく建て並ぶ家屋も大きいが人の気配があまりしない。鉱山から鉱物が産出されていた時はかなり賑わっていたのだろう。村の奥の崖に坑道の入り口があるそうなのでそこに向かう。廃村ではないみたいでちらほら人も見かけたが隠れるように逃げていく。よそ者があまり来ないのだろう。


「君たち、ここは危ないかもしれないから違う所に行きなさい」


 坑道の入り口では子供達が遊んでいた。何も無いとは思うけど一応注意してみる。


「何いってんだよ、ここは俺達の基地だお前こそどっか行け」


 なかなかいい教育をされてるみたいだ。


「生意気なガキ共ね、さっさと家に帰れって言ってんのよ!」


 僕の頭からミネアが飛び出して子供達を威嚇する。子供相手に何やってんだか。


「うわ、虫、虫がしゃべってる」


「虫じゃないわよ、妖精様よ、こんなに可愛いあたしのどこが虫みたいだっていうのよ、このすっとこどっこい共っ!」


「うわ、うんこ虫が怒った!怒った!」


 なんで子供ってなんでも下品な言葉をつけたがるんだろう。子供達とミネアは追っかけっこしてる。なんだか楽しそうだけど、仕事が先に進まない。


「あのねえ、よーく聞いて。暗闇にはゴブリンがいるかもしれないよ、悪い子供はゴブリンに攫われるかもしれないよ」


「何言ってんだ、お前だって子供じゃねーか」


 うっ、相手は子供だ。子供っ。


「僕は子供じゃなくて魔法使いだよ。光よ」


 僕の出した魔法の光球が坑道の中にふよふよ浮かぶ。


「「「すげぇ!」」」


 子供達が驚嘆の声を上げる。田舎になればなるほど魔法に触れる機会はそうそうないからね。


「じゃあ、お姉さんは中を調べてくるから、光が無い所では遊んじゃ駄目だよ」


 僕は光球を1つ残して、収納から出した杖の先にも光を出して坑道の奥に足を踏み入れた。


「おめーら、怪我すんなよ!」


「あんたたちもね!」


 なんかミネアと子供達は通じ合ったみたいだ。



 坑道は脇道は無く大きく真っ直ぐ伸びている。杖の光に照らされた壁の凹みが僕の動きに合わせて動き、まるで何かの生き物がこっちを伺っているみたいだ。けど、気配はしないし、何の音もしない。僕達はどんどん前に進む。


「ラパン、あれおかしくない?」


 ミネアが天井を指差す。なんか丸い穴が空いている。なにがおかしいのだろう。


「あの穴丸すぎじゃない?ここって人が掘ったのでしょ誰がどうやって何で天井に綺麗な丸い穴を掘ったの?」


 そう言われてみると周りの壁はボコボコなのにその穴は綺麗に丸く掘ってある。


 カリカリカリカリッ


 何か遠くから音がする。その時僕の頭にとある魔物が思い浮かぶ。


 ワーム。


 地中を掘り進む巨大なミミズのような虫。砂漠に住むサンドワーム、岩山に住むロックワームなどがいて円形の固い歯のついた口で穴を掘り進む。鉱山等に住み着く事もあり、その際には丸い穴を掘ると言う。


 まさかね、こんな王都の近くに恐ろしい魔獣がいるはずないし。


 パラパラッ。


 僕達の上に小石が落ちてくる。


 僕達は上を見る。


 ガゴンッ!


 なにアレ?


 大きい口?


 ロックワーム?


「「ギャアーーーーッ!」」


 僕は一目散に走り出した。


 うえっ、めっちゃ気持ち悪かった。ヌメヌメしたでっかいミミズみたいのに歯がいっぱい生えた口がついていた。


 後ろを見るとそれがのたうちまわりながらついてくる。


「ラパン、なによあれ?」


「ワーム、ロックワームだよ、なんでこんな所にいるんだよ」


「見えたわ入り口、ゲッ、ガキ共がいるわ!」


 なにっ、ていう事はやるしかないか。


 振り返ると音はするけど姿は見えない。少しは引き離したか?どうしよう?


「ミネア。戦うよ。人間になって」


「あいな!」


 ミネアは僕の頭から飛び降りると、大人の女性に変身する。僕は収納からミノタウロスの大斧を出して振り返り構える。あの口をどうにかしないと。岩をかみ砕くあれをくらって無傷で居られる自信は無い。けど、僕には秘策がある。


 闇の中から大口を開けたワームが現れる。


「ごめんミネア。アダマックス!」


 僕の使える古竜魔法。あらゆるものの時の流れを止めて壊れない物質に変える魔法。

 メタリックな像みたいになったミネアをワームの口に蹴り込む。


 ガリガリガリガリガリガリガリガリ!


 ワームの口から不快な音が鳴り響く。


 時か止まったものは不毀ふきになる。


 ザシュッ!


 僕はミネアをカミカミしているワームの頭を一撃で落とす。しばらくカミカミしてたけど、その動きを止めた。胴体もしばらくのたうちまわっていたけど動かなくなる。死骸を収納に入れて、ミネアの魔法を解く。


「ラーパーンー」


 うわっ、ミネアの目が尋常じゃない。めっちゃ怒ってるよ……


「みんな無事だったし、ねっねっ」


「ねっねっ、じゃないでしょ、ごめんなさいは?」


「ごめんなさーい」


「ったくっ。ケーキ、ケーキいっぱい奢りなさい!」 


 依頼料は全てミネアのケーキになったけど、ワームの素材と討伐報酬はかなりのものだった。



 




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