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 脇固め

 私の一番得意な技です❤


 巨大な人型の角が生えた魔物。オーガーの前に立ちはだかる小柄な影。黒装束に身を包み背中には一振りの剣を背負っている。忍者ピオンだ。


「グオオオオオーッ!」


 オーガーはその場で立ち止まると、その口から獣のような咆哮が溢れ出す。


『お前程度が俺を止めれると思うなよ』


 その叫びはそう言ってるように思えた。それに怯む事無く、ピオンは少し身を沈めオーガーに歩み寄る。


 そして手のひらを上に「クィクイッ」とオーガーに手招きをする。おお、オーガー相手に格闘戦をするつもりか。


 オーガーは立ち止まり、一瞬けげんそうな顔をする。


「ウガオオオオオオーッ」


 再び咆哮を上げるとピオンに襲いかかる。


 沈み込み、一直線の右のストレート。まるで巨大な弾かれた弾丸のようだ。


 そのハンマーのような拳がピオンに突き刺さったと思ったら、オーガーは勢いそのまま地面にキスをする。地を滑る巨体に絡みつく小さい黒い影。捻りあげられたオーガーの右腕にピオンが抱きついてる。


『脇固め』


 まるで巨木にしがみついている小猿だ。場違いながら少し可愛らしさが滲み出ている。


 ブチリッ!


「ギャアアアアーッ」


 何かが引き千切れるような音がしてオーガーの手は構造上あり得ない方向を向いている。


 グシャリッ!


 腕を離したピオンはオーガーの後頭部に踵を沈め込む。オーガーはピクリと痙攣すると動かなくなった。


 ピオンは距離を取り、しばしオーガーを眺めたあと服を整える。そして覆面を剥ぎ取り僕らの方を向くと相好を崩した。


 サイコパス。間違いなくサイコパスだ。


 まあ、戦闘職である以上誰でもすこしはそういう側面があるのかもしれないが、ピオンからは『ドS』、『ストーカー』、『サイコパス』といったあんまり良くない香りが滲み出ている。


「容赦ないわね……」


 マイが呟く。どうも僕と同じ感想みたいだ。


「関節技はいい」


 ピオンが口を開く。全く息切れしていない。


「多対1には余り適していないけど、1対1なら、どんなに殴られてやられかけても、1発で形勢を逆転できる。打撃と違って自分は痛くない、武器を使わないので、煩わしい武器のメンテナンスもいらない」


 いつになく饒舌なピオンの語る関節技の魅力に僕も賛同する。けど、なんでそんなに熱く語っているのだろう。


「ピオン、私もそれ、やってみたいです。教えて下さい」


 ドラゴンの化身アンがキラキラした目でピオンを見る。ピオンの口角が僅かに上がる?


「いいけど、そうね、ザップきて」


 ピオンがキラキラした目で僕を見ている。それが狙いか。僕をいたぶりたいのか。まあ、けど役得だ。さっきピオンはひっしとオーガーを抱き締めていた。なんていうか、すこし羨ましかった。でっかいものに挟まれて。


 僕はピオンに言われた通りに殴りかかる。


「右手の攻撃に左に避けて、相手の右手に右手を引っ掛ける。相手の右手を時計回りに捻りながら左手で相手の二の腕あたりを挟み込む」


 おっと、来たか念願の瞬間!


 ん、おかしいぞ、柔らかくない。なんかざらざらした感触。


 鎖帷子!!


 そうか服の下に油を差して音がしない鎖帷子を着込んでいやがるのか?


 まあ、よく考えたら、迷宮の中だし当然か……


 その間刹那、僕はバランスを崩し前に倒れる。


「後は腕を捻じり上げながら体重で落とす」


 見事にピオンの脇固めが僕に決まる。密着して男としては嬉しい体勢のはずだが、僕に触れるのは冷たいガサガサなものだ。ガッチガチに鎖帷子着てやがる。残念……


「ピオン、前も言ったと思うが、俺の背中は柔らかい。動けないけど全く痛くないぞ!」


 ん、なんかこのあとの展開が予測できる。


「そう言う時は相手の肘を直角に曲げて、相手の頭の方に捻りこむ。技名『肘車』……」


 抑揚の無いピオンの声に少し喜色が含まれてるような。


「おうっ!おうっ!おうっ!ギブギブギブアップ!」


 やべぇ、くそ痛ぇ!ちびりそうになってしまった。涙出そうだよ!


「ザップ。大きな声出さない。男の子」


 技を解いてくれたけど、間があったような。まだビリビリしてる。


「「ダブル脇固め!」」


「はうぅ!」


 次は僕の両腕はマイとアンに掴まれて、僕は地面に倒れ込む。地味に痛い。すげーな、見ただけで脇固めマスターしたのか。けど、僕の両腕は幸せだ。


「キャメル・クラッチ」


 背中に重みがかかり、僕の頭が引き上げられる。ピオンが僕にまたがっている。流石にお尻は鎖帷子ないみたいだ。


 正直、カオスな状態だけど、少し幸せな僕もいた。これもハーレムの一種なのか?

 

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