表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

491/2099

 暗殺者

 すみません、昨日は夜遅くまで


『ありふれた職業で異世界最強』


 という大人気の作品を読んでました。とっても面白くて止まらなかったです。中二、ジョ○ョ、私の好物満載です。初めて呼んだのですけど、ハジメさんはザップ、シアさんはマイ、ティオさんはアンと共通点多いような‥‥

 また、ダイブしてきまーす(≧∇≦)b


 誰かに見られているような気がする。


 僕は辺りを見渡すが、まあ見られていて当然か。ギャラリーの幾人かと目が合うが微笑みを返してくれた。


 僕は今、朝の日課のハンマーの素振りをしている。そこでなんとなく誰かに見られているような気がして辺りを探っている訳だが、何の成果もない。


 今日の素振りメンバーは僕、マイ、北の魔王リナ、冒険者の戦士アンジュと神官戦士ミカだ。家の隣の空き地で素振りをしていて、かなりの数のギャラリーが集まっており、屋台も2軒出ている。

 ギャラリーが求めているものは、可憐な少女たちが巨大武器を振り回す様を見るためと、ほぼ毎日発生する名を上げる為に僕たちに挑む者との戦いを見るためだ。

 今日もどこぞやの騎士さんが現れて、神官戦士のミカに可哀相な程ボコられていた。


 なんか今日は、気もそぞろで集中出来ない。ずっとなんて言うかねっとりとした視線に晒されているような気がするが、その相手は解らなかった。ギャラリーには旅人とかもいて正直顔の区別はつかない。


 視線についての『みみずくの横ばい亭』のマリアさんの言葉を思い出した。僕がラパンだった時に女主人のマリアさんがラパンの接客教育中に話してくれた事だ。


『人にサービスする者は、お客さんの視線に気付いてね。人には見られている視線に気付く人と気付かない人がいるわ。その違いは人に見られているって意識をもって回りに気を使っているかいないかで変わってくるわ。ラパンちゃん、あなたにはその意識が薄いわ。いつでも人に見られているって意識をもってね。そしたらあなたをチラチラ見る男の子たちの視線にも気付けるはずよ。それに気付いてニコッとするだけであなたはモテモテよ』


 そう言ってマリアさんはパチンと僕にウィンクしてくれた。マリアさんは老若男女に好かれている。よし、僕もそうなって皆に愛されるラパンになろう!


 そんな事を思った黒歴史がさぶいぼを作る。男の子の熱視線なんか勘弁して欲しい。


 そんな事を考えながら、トレーニングを終え汗を拭いている僕に、屋台を切り盛りしていたピオンが唐揚げ串を僕に差し出す。条件反射で口に入れる。


「ザップ、暗殺者よ。私が始末しようか?」


 メイド服の忍者は僕に耳打ちする。マイが見てるので、過度の接触は控えて欲しいものだ。微かに乳的なものが僕を擦った。精神攻撃なのか?


「いや、俺がやる」


 確かにピオンは強くなった。頼めば喜んでその暗殺者を倒してくれるだろう。けど、それは筋が違う。多分暗殺者が狙っているのは僕だ。それは僕の暗殺者だ。せっかくの暗殺者をピオンに渡したくない。


 僕は家の風呂で汗を流すと、ワクワクしながら町外れに向かう。僕をどうやって暗殺する気なんだろうか?


 町を出て荒野に着く。視線は感じるのに回りには誰も居ない。


「居るのは解ってる。出てこい!」


 僕は手頃な岩に腰掛け声を張る。


「………っ!」 


 僕は前方に飛び込んで回りながら立ち上がる。そして後頭部にエリクサーをかける。危ねぇ、なんかチクッとした。反応が遅れていたら後頭部をブッ刺されていた所だった。しかも何らかの毒もついてたと思われる。

 僕の腰掛けていた岩影からのそりと女の子が這い出てくる。黒装束で口元も隠している。ピオンと同じロマンな格好、忍者だ。最近は忍者が流行しているのか?


「お前は誰だ?」


「闇遁……」


 忍者は答えず、その体から闇が溢れ出す。みるみる広まり僕をも闇は包み込み、視界が閉ざされる。


「槍王!」


 僕は忍者のいた方に向かいだいたい上下1メートル間隔で満遍なく収納のポータルを並べ槍を射出する。せっかくの忍者、殺しはしない。


「グフッ!」


 闇に乗じて奇襲する気だったのだと思うが、見えなくてもほぼ面の攻撃に晒されたら関係ない。闇が晴れ腹に槍を生やした忍者が仰向けに倒れている。


 僕は警戒しながら近づく。


「ザップ・グッドフェロー。強すぎる。けどあなたもここまでよ。あと10秒で爆発の魔道具が発動するわ」


 そういうと忍者は気を失った。なんと、自爆する気か?

 させてたまるか貴重な忍者を。とりあえず忍者の回りの無生物全てを収納に入れて、全裸になった忍者にエリクサーと一緒にマントをかけてやる。少しいろんなものが見えたが不可抗力だ。でかかった。

 爆発の魔道具はどんぐりくらいの大きさで忍者の心臓のそばに埋め込まれていた。取り出そうとしたら出血多量で死ぬようにだろう。どうやったのか解らないが、やった奴は糞だな。見つけてぶっ殺す事を心に誓う。


「ザップ、痴漢。気絶したパイを裸にした」


 いつの間にかメイド服のピオンが後ろに。


「何言ってる。パイなど見てない」


「こいつの名前。パイ。ピオンの友達」


 おっと、名前だったのか、紛らわしいな。ピオンの友達と言う事は盗賊都市からの刺客だったのか。


「ううん、あれ、生きてる? ピオン?」


 焦点の合わない目でパイと言われた忍者は身を起こす。パイのパイが見えそうになる。 


「パイ、お前の主君は今日からザップ。私の仲間だ」


 ピオンとパイはしばらく話し合った。どうもパイは体に埋め込まれた魔道具のお陰で暗殺者をしていたみたいだ。


「ザップさん、自由にしてくれてありがとうございます。私の名前はスパイダー。嫌ですけど、皆は私の事をパイと呼びます。よろしくお願いします」


 良かった。胸がデカイからパイと呼ばれてますとか言われたら、正直対応に困る所だった。

 新しい忍者が仲間になった。これで、気に入らない奴を暗殺できる! って暗殺すること無いし……


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ