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 吊り上げ取り


「今日は、火元流柔術の技を皆様に伝授しに参りました。よろしくお願いします」


 黒装束の忍者ピオンが目の前で手を合わせる。拝むような形の礼だ。


 今日はデル先生の格闘術講座特別編。メンバーはいつメンの、僕、マイ、ドラゴンの化身アンとマッスル黒エルフのレリーフ、エロ子供族のパムだ。僕らはいつも通り、道着に黒帯という出で立ちだ。

 講師のデル先生の隣には今日は忍者ピオンが立っている。


 デルが口を開く。


「ピオンは私達エルフが知らない技や、私が知ってるものより進化した技を身に付けてます。さすが忍者、長い年月をかけ技に磨きをかけてきたのだと思われます。今日はそのうちの一つを教えて貰おうと思います」


「軽く火元流柔術について説明させて頂くと、ルーツは東方の島国で侍とか忍者の生まれた国から伝わってます。甲冑を着た者に対して、守る事が出来ない関節を極めたり破壊して無力化する事を目的としたものが多いです。ちなみに私達は関節技の事を関節の逆を攻める技、逆技と呼んでます。その中でも実用性が高いものを今日は教えようと思います。ザップさん、前に出て下さい」


「えっ?」 


 僕はピオンに呼ばれ咄嗟に自分を指差すと前に出る。今日はピオンは講師という建前か、言葉遣いが丁寧だ。呼び捨てじゃない。

 なんか定番になりつつあるが、また僕が実験台で痛めつけられるのか…

 とは言え、パムは小さ過ぎるし、レリーフはデカすぎる。予定調和ではあるが。


「ザップさん、ゆっくりと中段突きをお願いします」


 僕はゆるゆると拳を握りピオンのお腹に向けて伸ばす。どうしてもピオンのお腹の上に目が行ってしまう。意外にデカイな。


「右手の攻撃に対しては、左によけながら右手の親指を下に向け相手の拳を掴みます。その時に親指を相手の手の甲の真ん中に当てて掴むのがコツです。そして掴みながら親指を上に向けるように捻り上げます。そして相手の右手の肘を曲げながら左手で左肩を掴むと相手を無力化できます。これが『吊り上げ取り』です。よく、騎士とかが罪人とかを捕縛するのに使われている技です」


 僕はピオンに右手を捻じ上げられて背中側から掴まったようになっている。動こうとしても全く力が入らない。


「ピオン、残念だが、全く痛くないぞ、俺は体は固いが、何故か背中だけはよく曲がるんだ。いつでも背中の好きな所を自在に掻く事ができる、孫の手いらずだ」


 ピオンが右手を吊り上げるが、力が入らないだけで痛くない。抜け方も見当がついている。後ろに思いっきり体当たりしたらピオンは吹っ飛ぶはずだ。いろんな所に触れるかも知れないが、不可抗力だ。期待しながら足に力を入れようとする。


「ふがふっ!」


 僕は激痛で前のめる。


「たまに、背中の関節が柔らかい人とかもいますが、そういう時は相手の右手を背中から引いて吊り上げると効果絶大です」


 背中から淡々としたピオンの声が聞こえる。いかん、めっちゃ痛い。なんか少しちびったような気もする。耐えろ耐えろ僕!


「ザップ、そんなに痛いの?涙目よ……」


 マイが労りの目で僕を見ている。


「ピオン、ギブアップ!ギブアップ!」


 解放されたがめっちゃ痛かった。なんとかちびってはいなかったが、逆技の恐ろしさを知った。大人でも泣くぞ……



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