今日も雨
「あっちゃー、今日も雨だな……」
窓を開けて外を見ると今日も雨。雨でも素振りをするのだが、やっぱり爽快感が足りない。それに、マイ達も参加するのだけど、服が濡れるのが嫌とかいう理由で水着で素振りをしたりする。なんて言うか、いつもよりギャラリーが増えて晒し者感がハンパない。特にマイがジロジロ見られるのはなんか嫌だけど、素振りは止めたくない。
沢山の人々からの人気が力となり勇者の剣を強化するという。勇者力を高めるために素振りはマストだ。
「マイ、体冷やしたらいけないから、お前、今日は家の中で素振りしろよ」
僕はなんか暖かい飲み物を飲んでいるマイに話しかける。そうだ。最近は朝晩は涼しい。ていうか少し寒い。
「えー、あたしも参加するわよ。また、新しい水着買ったのよ」
やっぱり水着参加なのか。新しい水着?少し見たい気もするが、近所のおっさんとかにガン見されるのはなんかやだな。悩ましい。
「なんて言うかな……」
僕は勇気を出して思った事を口に出す事にした。幸い二人っきりだし。アンは寝てるし、導師ジブルは仕事だし、猫ちゃんはここしばらくたまにしか家に寄りつかない。
「なんて言うかな、マイの水着姿がジロジロ見られるのは何か変な気がするんだよ……」
「んー、ザップ、あたしの水着姿を他人が見たら、何でザップが変な気持ちになるのかなー?どういう気持ちなのか教えて欲しいなー?」
鈴を転がすような澄んだ声が耳をくすぐる。マイが机に頬杖をついて、やたらキラキラした目で僕を見ている。猫耳もピコピコだ。可愛い。正直可愛い。
そういえば、一緒に暮らしているけど、マイは僕にとって何なんだろうか?家族?仲間?それとも……
そろそろ、少しは前に進んでもいいんじゃないだろうか。僕はマイが好きだ。とっても好きだ。マイが僕の事をどう思ってるかは解らないけれど、嫌いな人を見て、あんなキラキラした目はしないはずだ。
僕は早くなる心臓の鼓動を気にしないようにして、出来るだけいつも通りに振る舞おうとする。何故か怖いような感じだ。逃げ出したいような気がする。最近はどんな強そうな敵の前でもそんな気持ちになった事ないのに……
「マイの水着姿を他の男に見せたくない。水着姿は俺にだけ見せてくれ……」
僕は一言一言絞りだすように口にする。
「ザップ……解ったわ。上からシャツ羽織るわね、それで……」
バタン!
「ザップ!行くぞ!」
大きな音を立てて扉が開き、北の魔王リナが入ってきた。デフォルトで金色のビキニアーマーだ。
マイが少し悲しそうな顔をした。
リナに拉致られて、僕たちは外に向かった。少しほっとしたのは事実だ。
マイは水着の上にシャツを着ていたけど、貼り付いて逆にエロかった。逆効果だった。