森人格闘家と忍者
「今日は異種格闘戦です」
エルフの野伏のデルが声を張る。もう最近はデルの職業は武闘家でいいような気もする。彼女は冒険で実際はどんな立ち位置なのだろうか。最近彼女らのパーティーの戦いを見ては無いが、全員前衛な戦い方が目に浮かぶ。デルの所属するパーティーは、戦士、魔法使い、神官、野伏というバランスがいいように一見見えるが、実際は全員近接戦特化だ。面白い程に脳筋だ。だが、それ故に殲滅能力が高い。今度また一緒に冒険してみるか。
今日はデル先生の格闘技講座だ。いつメンで、僕、マイ、ドラゴンの化身アンと、マッスル黒エルフのレリーフと、子供族のパムだ。皆、道着に黒帯を締めている。
あと、デルの隣には小柄な黒装束の女の子。自称忍者のピオンだ。僕的には、僕らの道着より、ピオンの黒装束の方が格好よく見える。それに生地も薄く、ピオンの素晴らしいプロポーションがよく分かる。幼い顔なのに、胸はマイより大きく、しかも腰はデルよりもくびれている。
「初めての方もいらっしゃるので、一応自己紹介します。ピオン。忍者です」
ピオンはペコリと頭を下げる。普通にしてたら普通にいい娘なんだけど、なんかヤンデレ臭がする。
「ピオンさんは、忍術の達人ということで、本日は稽古をつけて貰うことにしました。まずは誰かピオンさんと戦いたい人、挙手をお願いします」
「はいっ!」
パムが即座に手を上げる。見た目は子供なのに目がエロい。こいつ絶対ドサクサに紛れる気だな。
「ではお願いします」
ピオンはパムと対峙すると目の前で手を合わせる。パムは拱手だ。
「かかってきて下さい」
「そちらからどうぞ」
ピオンにパムが答える。以外にパムは堅実派だ。相手を見て冷静に対処するタイプだ。
「では、行きますね」
ピオンは踏み込むとパムの顔に回し蹴りを叩き込む。パムはそれを受けストレートを放つが彼の身長からちょうどピオンの胸の高さだ。そのてらいの無い潔さに僕は少し羨ましさを覚えた。けど、それはピオンに触れる事無くその手を引っ張られ、後ろからピオンが抱きつき後方に跳び上がる。2人は頭から大地に落ちるが、激突したのはパムの頭だ。ピオンはすぐにシュタッと離れる。パムだから死んではいないと思うが、一撃で意識を刈り取られている。倒れたパムに近づくが、その顔は幸せそうだった。
「ザップさん、柔らかかったです……」
エリクサーをかけてやると、開口一番、欲望まみれな言葉を吐く。やられて当然だな。
「パム、実戦だったら死んでますよ。セクハラに命をかけないで下さい。そこでしっかり私の戦い方を見ていて下さい」
真打ち登場。デルがすっとピオンの前に立つ。
「教え方が悪いんじゃないですか?私が勝ったらザップさん達に私が教えましょうか」
ピオンが僕の方をチラ見する。あ、今、軽く唇なめた。むむ、さっきのピオンの技の練習とか間違いなく密着しまくるよな。それはいかん。身の危険を感じる。ちょっとそれもいいかも。
「いいわよ、その時は私もお金払って参加するわ」
デルは軽くピオンの挑発を流す。涼しげな声に焦りは全く無い。まあ、そうだよな。デルが負けるビジョンが全く見えない。ピオンには個人レッスンをお願いしようかな。
しばし、デルとピオンは対峙する。ピオンはスタンス狭めな少し前傾な構え。デルは両手を垂らして前足に少し重心をかけた脱力した構え。いや、違う。デルのは構えでは無い。『無形の位』、より上位の構えは位と呼ぶとデルは言っていた。水のように変幻自在に動ける位という。
「行きます!」
じれたのかピオンがしかける。軽いジャブからまた上段の回し蹴り。下がりながらそれを強くデルは受ける。なんか違和感を感じた。
デルが間合いを取ると、ピオンはその場に崩れ落ちる。しばらく立ち上がろうともがくが上手く立ち上がれない。
「参りました……」
ピオンがその場でデルに頭をさげる。何が起こったのか?
「パム、治療して差し上げなさい。拳と脛を砕きました。素手による攻撃は攻撃した部位が一番攻撃されやすいという事を忘れないように。当たらない蹴りは自殺行為です。足をやられたら戦えなくなります」
やべー、デル強すぎるだろ。
パムがピオンをエリクサーをかけて治療してたけど、服が透けるように微妙な所にもかけて、ピオンに折檻されていた。