お盆
「今日はお盆と言う日だ。東方の風習では野菜に手足をつけてやると、祖先の霊がそれに乗ってやってくると言う」
僕の目の前のテーブルにはには反り返った茄子に楊枝を4本手足として刺したものがある。僕作だ。ずんぐりむっくりでなんか可愛らしい。
「あたしもそれ聞いた事あるわ。あたしも作ろっと」
マイは台所に行くと、人参を持ってきた。当然手足がついていて、それを僕の茄子の隣にぴたっと置く。
「仲良し」
マイが微笑む。んー、なんか可愛らしいな。僕はこういうのに少し弱い。
「お待たせしました」
見た目幼女の導師ジブルが小さな手に何かもってくる。カボチャをくり抜いて顔がある奴に楊枝が4本刺さっている。ジャックランタンだ。そりゃハロウィンだろという言葉を呑み込む。ボケだったらウザいし、本気だったら可哀相だ。スルーするに限る。
「何ですか、皆さん。大したこと無いですね。そんなのじゃ、強い祖先の霊を呼べないですよ」
ドラゴンの化身アンはそう言うとキッチンの方に駆けていった。
お盆って供養的なもので、決して死霊術の一種ではないはずだが、面倒くさいので放置だ。
それからしばらくしてアンは戻って来て、僕達の野菜の横に激しい物体を置いた。
「百分の一スケールの野菜ドラゴンです!」
うん、素晴らしい出来だ。ゴーヤや茄子や胡瓜などの野菜の特色を生かしてそれを削り、4本の足でテーブルを踏みしめ、天に向かって咆哮をあげていると思われるフル野菜のドラゴンがそこにいた。カラフルな所を除けばまるで生きているかのようだ。
「関節部分は目立たないように楊枝で留めてます」
アンが腰にてを当ててドヤる。なんかムカつく。野菜ドラゴンの首でも千切ってやろうか。
「アンちゃん、凄いわね。と言うわけで、明日それ全部食べてね」
マイが笑顔でアンに話しかける。みるみるアンの顔が曇る。
「えー、何言ってるんですか、私ドラゴンですよ、草や実なんか食べないですよ」
「アンちゃん、食べ物は大事にしないと。ちゃんとお肉と一緒に煮こんであげるから」
「はい、しっかり食べますです」
アンはしぶしぶ頷く。
「マイさん、けどその野菜煮こんで美味しい料理になるんですか?」
ジブルが問いかける。僕も同意見だ。
「それは、明日のお楽しみ」
まあ、マイなんで大丈夫だろう。
そしてしばらく色々したあと僕は眠りについた。そして変わった夢を見た。
その時僕はそれが夢だと解っていた。
目の前には顔がぼやっとして解らない1人の少年がいる。僕の作った茄子の動物の上に座っている。茄子は馬位の大きさだ。
「お前は誰だ?」
「ん、僕かい?解らないのかい。君が呼んだのに。僕の名前は………ン・グッドフェロー」
中性的な声が謎空間に響く。そこで目を覚ました。
変な夢だったけど、夢なので気にしない事にした。
ちなみに、野菜ドラゴンはカレーになった。