表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

484/2100

 巨人


「メテオ・ストライク!」


 オリバン1の魔法使いガンダゴンの声が響き渡る。最強と言われる魔法『メテオ・ストライク』。その魔法が封じ込められたスクロールが発動された。空に現れた燃え盛る隕石が巨人に命中する。これで駄目ならもう打つ手が無い。


 ドゴゴゴゴゴゴーッ!


 爆炎が弾け砂煙が巻き起こる。巨人の動きが止まったのが遠目にも解る。


「やったのか……」


 誰かが呟く。


 砂煙が晴れ少しづつ視界が開けてくる。


 大きく窪んだ大地の中央に黒い塊。


「オオオオオオーッ」


 騎士団から歓声が上がる。いつの間にか固く握りしめた拳の力を抜く。まるで水で手を洗ったかのように汗で手はヌルヌルだ。


「確認に出る。隊列を崩すな!」


 私は剣を抜き前に出る。危険な事を率先してこその団長だ。


「だ、団長……」


 団員の1人が震える声を上げ巨人の方を指差す。

 巨人は立ち上がっていた。巨大な鉄の塊の様な剣と盾を手にこちらを睥睨している。所々皮膚は炭と化しているが、それが剥げ落ち桃色の新しい皮膚がその下から見える。そして巨人は我々の方に向かって歩き始めた。


 もう、打つ手は無い。バリスタ、カタパルト、最上級の魔法、全て試した。あとは少しでも民間人が逃げる時間を稼ぐしかない。時間が経てば東方諸国連合の他国からの援軍が来てくれるだろう。傭兵都市オリバンの騎士団としての責務を果たすとするか……


「騎士団の精鋭たちよ。我らの大切なものを守るため今こそ力を示す時。私に続け!」


 私は剣で天を突く。


「「ウオオオオオオーッ!」」


 大地を揺るがすような気合が騎士達から放たれる。


 私は迫り来る巨人を見る。


 その前に小さな影が見える。なんだいつの間に。巨人が大きいから小さく見えるが、人だろう。1人で巨人の前に出るとは、かなりの阿呆なのか?売名行為か?


「逃げ……」


「シャーーッ!」


 私は逃げろと言おうとしたが、みなまで声を発するまえにその人物の気合にかき消される。

 何なんだ?その声を聞いただけで身が竦む。まるでコロシアムで王者と対峙した時みたいだ。巨人も足を止めた。


「出でよマウント・スレイヤー!」

 

 ちっぽけな男が叫ぶ。その手に大剣が現れる。何だあれは?大剣、確かに大剣だがその長さが尋常じゃない。裕に巨人の背丈を超えている。


「ウオオオオオオーッ!」


 その人物は気合を吐きながら、その大剣を唐竹割りのように振り下ろす。振り下ろすというよりも、ただ倒しているようにしか見えない。それを巨人は安々と盾で受け止める。まあ当然だな。あんなものを扱える人間などいるはずがない。


 ガコン!


「…………っ!」


 私は、驚愕で目を見開く。巨人は武器を落とし、両手で盾を支える。なんだ?何が起こっている?


「ば、ばかな……」


 誰かが口を開く。よく見ると化け物大剣を持つ人物は片手で剣を支えている。それを巨人が震えながら両手で盾で押さえている。なんの冗談だ?私は夢を見てるのか?


「俺の名はザップ!俺の名を呼べーーーっ!」


 その人物、ザップが叫ぶ。ザップ、あのザップなのか?


「ザップ!」


 誰かが叫ぶ。


「ザップ」


「ザップ」


「「ザップ」」


 ザップが空いている片手で煽る。


「「「ザップ」」」


「「「ザップ」」」


「「「ザップ」」」


 ザップコールが大きくなる。なんだ、まるで人気剣闘士の試合を見てるようだ。先ほどの恐怖が消え胸が熱くなる。いつの間にか私も声を高らかに叫んでいた。


「「「ザップーーー!」」」


 足踏みも交えザップコールが大地を揺るがす。


 ザップは剣を両手で持つ。巨人は片足をつき、両足をつき、盾がひしゃげていく。


 バキュ!ゴリュ!


 巨人の体から変な音がする。


「絶剣、山潰し!!」


 ザップが叫ぶ。


 ザシュッ!


 一瞬だった。一瞬で巨人の体は2つに別れゆっくりと大地に倒れていく。


「ウオーーーーッ!」


 ザップが化け物大剣で天を突く。


「「「ザップ!」」」


「「「ザップ!」」」


「「「ザップ!」」」


「大剣巨棍主義」


 私の口から言葉が漏れる。一昔前にコロシアムで流行った戦い方だ。巨大武器を手に攻撃を耐えて耐えて耐えまくって、巨大武器の一撃で勝負を決する。まさかそれを体現する者がいたとは。そのロマンに体が熱くなる。


 それからしばらくザップコールが大地を震わし、そのまま街に凱旋し、最高の宴が始まった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ