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 2代目最強の荷物持ちの地味な冒険


「今日はこれにしようと思う」


 僕は、町の仮設冒険者ギルドの掲示板に貼ってある依頼を指差す。


『薬草採取』


 その紙には大きくそう書いてあり、その下には詳細が記してある。この依頼は常設依頼。いつでもそこに書いてある薬草はもってきたらギルドが買い取れる分は買って貰える。基本的に薬草系は不足がちなので薬草を買い取って貰えなかったという話は聞いた事が無い。


 僕の名前はラパン・グロー。冒険者だ。職業は荷物持ち。魔法が使え、武器を使った戦闘も出来る。いつもは『みみずくの横ばい亭』という、昼はレストラン、夜は酒場のお店でウェイトレスをしているが、休みの時は気が向いたら冒険者をしている。


「ラパン、止めようよ、それって草むしりでしょ、間違いなくつまんないわよ」


 僕の回りを手のひらサイズのキラキラとした蝶のような羽根を生やした女の子、妖精のミネアが飛び回っている。妖精はかなり珍しい生き物のはずだけど、ここの町の人たちはもう見慣れているので皆日常の一部として捉えてくれている。まぁ、それを言ったら、僕の赤い目と銀色の髪の毛もかなり珍しいものではあるけど。


「草むしりじゃないよ、薬草採取だよ。やっぱり冒険者として、基本的なクエストもこなしておかないと他の冒険者と話したときに色々会話がかみ合わなくなると思うんだ。退屈かもしれないけど、やってみたいんだ」


「解ったわ、けどあたしは手伝わないからね。見とくだけよ」


「うん、じゃあ行こっか」


 僕とミネアは町から比較的近い森に行く事にした。


 今日狙う薬草はドクダミ。東方から来たと言われる薬草でポーションの材料になって生の葉はできものとかに効くらしく、乾燥させて煮出して飲んだら体にいいと言われる。それが背負い籠にぎゅうぎゅう一杯で銅貨3枚。僕の働いてるお店でギリギリ日替わりランチが食べられる。正直稼ぎにならないような……


 森に入り、高い木が生えてるジメジメした所にドクダミはまとまって沢山生えてる。こういう知識はザップの記憶にあったものだ。僕はしゃがんでドクダミを抜いて収納に入れていく。生えてる草は収納に入れられないけど、引き抜いたら入れる事が出来る。生きてるものは入れられないけど、抜いたばかりの草もまだ生きてるはずなのにそこら辺の基準は解らない。ドクダミは根っこまで含めた状態でも、葉っぱだけでも買い取ってくれる。葉っぱだけの方が若干値が下がるから。1本1本根元から引き抜いている。ドクダミは独特の臭いがしてとても臭い。なんか手が痒い気がする。しかも集中しすぎたら蚊がよってきて刺される。もう数カ所やられてとても痒い。そこにドクダミの葉っぱの汁をつけたら少しは収まった気がする。薬草って便利だと思ったけど、なんか間違ってるような気もする。


「なんか面白い事あったら、大声で呼んでね」


 ミネアはプーンと音をたててどっかに飛んでった。


 多分1時間くらいは経ったんじゃないだろうか。ずっとしゃがんでいたので痺れて立ち上がれなくなる。結構取ったと思うけど、まだ背負い籠1ついかない。この森は木々が生い茂っていて薬草は沢山あるけど、ザップが子供の頃いた所はもっと乾燥していて、彼は移動して採取を繰り返していた。しかもまた生えてくるように少しづつ残しながら。

 途中でミネアとご飯を食べたりしながら僕はドクダミをとり続けた。たまに無気味な虫に遭遇して声をあげたりしながら、無心で集めていく。正直しんどいけど、ザップはこれを毎日毎日何年も続けてた。負けてたまるか。


 一日で集めたドクダミは籠5つ分あった。お風呂に入ったあとのご飯は最高に美味しかった。けど、稼ぎは食事代で消えて、次の日筋肉痛だけが残った。




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