第四十八話 荷物持ち困る
ゴブリンの集団を見て僕は考える。
困った。
子供たちが見てる。
僕はいままで一生懸命生きてきたので、手加減というものをしたことがない……
もし、僕が何も考えず戦ったら、多分子供たちは夜な夜な悪夢にうなされる事になるだろう。
僕ですら、たまに自分の所業に嫌悪感を抱く事がある。なんか色々まき散らしている頭のないゴブリンが大量生産される未来が見える。
素手でいくか?
今度は果実を潰すかのようにゴブリンが弾けていくことだろう。それに色々なものが手につきそうで嫌だ。即却下だ。
まあ、また後でアイから補充すればいいので、子供たちの教育のために収納から出したドラゴンブレスで骨も残さず燃やし尽くす事にした。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「す、すげぇ……猿人間って火を吐くんだな……」
決して口から炎を出した訳ではないのだが、恐怖補正で子供達にはそう見えたみたいだ。
子供たちが、僕を迎える。尻もちをついてて、その下には水たまりを作っている。もしかして、選択を間違ったか? トラウマにならなければいいが……
「ザップー! 子供たち見つけたのね、あたしは粗方片付けてきたわ」
マイが駆け寄ってくる。手には血のしたたる巨大なミノタウロスの斧を持っている。おそらくゴブリン達の首を狩りまくったのだろう。正直、子供達を見つけたのが僕で良かったのでは?
「ううう……猫人間のお姉ちゃん、猿人間……猿人間火を吐くんだよぉ……」
子供達は泣きじゃくってマイに抱きつく。
「よしよし、大丈夫よ、猿人間はよい子には火を吐かないんだから」
マイは子供達の頭を撫でる。なんかいまいち腑に落ちない。間違いなく僕よりもマイの方が凶悪なはずなのに……
僕達は子供達を酒場に届けた。それはそれは感謝された。しばらくして『ダンスマカブル』の4人が逃げた事を村人達に伝えた時に、アイが帰ってきた。
「なんかですね、ゴブリンのボスっぽい集団がいましたので、軽く挨拶してきました。倒してもよかったのですが、人間の捕虜みたいなのを連れてたので、ご主人様を呼びに来ました」
「よくやった。後で肉をいっぱい食べさせてやる」
アイは喜んでぴょんぴょん跳びはねる。本当によく自制してくれた。最近の教育の賜物だな。こいつが本気を出せば、下手したら地形が変わる。捕虜も間違いなく死んでしまってただろう。
「軽い挨拶ってどんな事したんだ?」
「ドラゴンに戻って、軽く吠えただけですよ」
軽く吠えただけって、捕虜はショック死してしまったんじゃないか? それに間違いなくゴブリンたちは逃げ去ってる事だろう。
「アイ、今後は許可無くドラゴン禁止だ!」
早く言っとくべきだった。
僕らはアイがゴブリンたちを見たという場所に急ぐ。
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