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 エリクサーの泉

 昔の迷宮でザップとマイが二人っきりだった時のお話です。


「アアアアアーッ」


 巨大ではち切れんばかりの筋肉に覆われたミノタウロスの振り下ろした斧があたしの体を切り裂いた。あたしはその一撃を斧で受けたが、その斧ごと切り裂かれた。あたしから血が噴き出しまるで雨のように降り注ぐ。倒れたあたしの横にはあたしの英雄ザップが横たわっている。せめてすこしは持ちこたえて、あの人の役に立ちたかった……


「ザップ…ごめん…一撃も耐えられなかった…」


 私は最後の力を振り絞って……




 え……


 夢だったの?


 あたしは上体を起こし辺りを見渡す。


 確かあたしは胸の辺りを切り裂かれ大量の血を噴き出して……


 少しクラクラするが何処も痛くない。夢だったの?


 いや、夢じゃない。わたしの服の胸の所はぱっくりと布が裂けていて固まった血の跡がある。ああ、ブラが……予備は1つしか無いのに……


 あたしから少し離れた所にザップが仰向けに横たわっている。ほぼ裸で腰と首に汚れてぼろぼろな布を纏って全身血塗れだ。白目を剥いて口は半開きで、血の混じった唾液が糸を引いている。何処からどう見ても生きてるように見えない。もしかして、ザップはあたしを助けて……


 嫌だ……ザップが死ぬはずがない!


「ザップ!起きて起きて!」


 私はザップの肩を掴んで揺さぶる。固い、まるで牛とか馬の肩を触ってるみたいだ。


 ザップが目を開く。


 良かった。


 目頭が熱くなる。あたしはたまらずザップに抱きつく。なんかまるで馬小屋のような、動物の死骸のような臭いがするけど良かった生きていて。


 ザップの手があたしの頭に優しく触れる。耳にもあたってくすぐったい。幸せだ。このままずっとこうしていたい。


「近い。離れろ」


 ザップが低い声で呟く。嫌だ。あたしは更に強くしがみつく。ザップはあたしがしがみついたまま、軽々と身を起こすと両手であたしを引き剥がす。なんて馬鹿力だろう。あたしは必死にしがみついたけど、まるで木についてるセミの抜け殻を取るかのように引き離される。


 あたしたちのそばには綺麗な水を湛えた泉があり、それがエリクサーという伝説の霊薬を湛えたものだと教えてもらう。あたしたちはそれで命を繋いだみたいだ。しばらく話して、


「広間に行く。行水して服を縫え。終わったら呼びに来い」


 ザップはあたしに背を向ける。そういえば、さっきから何回か間違い無くザップはあたしの胸元をチラ見してた。あたしに興味が無い訳ではないらしい。恥ずかしいけど勇気を振り絞る。


「置いてかないで!あたし、ザップなら…」


「一緒に……水浴び……」


 ザップは扉を開けて出て行った。


 男はエッチだ。みんな女の子の裸を見る事しか考えてない。昔、仲良くなったおばちゃんが言ってた事だ。もしかしたら覗かれてるかも。もしかしたら乱入してくるかもと思いながらドキドキして服を脱ぎ、罰当たりだなと思いながら裸で水浴びするが、ザップは来ない。あたしは複雑な気分で服を来て広間に行くとザップは戦利品を漁っていた。


 あたしの魅力ってドロップアイテム以下なのか……


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