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 妹は妖精(前)


 遠い遠い昔の記憶。


 僕は毎日薬草を集める。妹と2人だけしか居ない村を出て山の中を歩き回る。

 最近は僕も少しだけ背が伸びてきて、力も少し強くなり、あとお金になる薬草の種類に関する知識も増えたので毎日の稼ぎは少しづつ増えてきた。

 魔法の収納も成長してるみたいで、どれだけ薬草をいれてもいっぱいにはならない。同じ村では買い取って貰える量に限りがあるので、売りに行く村も1つ増やした。

 今日の薬草を買い取ってもらう新しい村に近づき、収納から3つ背負籠を出してその中を薬草で満たす。隣村の雑貨屋のオババが決して人前で収納の力を見せないようにって言ってたからそれを守っている。けど、まだ子供だった僕はそれがどれほど重要な事かは気付いてなかった。もし気付いていたらもっと慎重に荷物の出し入れをしてた事だろう。後から考えるとこれが原因だったのだと思う。


 僕は1つの背負籠を背負い、もう一つを前に腕を通して担ぎ、もう一つを両手に持つ。そして村に入り雑貨屋でいつも通り半分は食料と物々交換、半分は換金する。愛想の無い店主に別れを告げ家に向かう。もうクタクタだけど妹の事を考えるだけで力が湧いてくる。



「にいちゃ、お帰り!」


「ただいま、ティタ」


 家の扉を開けるなり妹が抱きついてくる。最近は僕の稼ぎが増えたおかげで食事もまともなものになり、妹はみるみる元気になって、今では走り回れるようになった。けど、なんていうか1つ問題が。服越しになんか柔らかいものがあたるようになってきた。ブラジャーというものが必要だろう。母さんのは大きすぎて使えない。どっかで買うしかないけど何処に売ってるのだろう?


 最近、成長するにつれ、妹はさらに母さんに似て綺麗になってきた。けど、僕が目にする女性と言えば、雑貨屋のオババとたまに見かける野良仕事でガタイのいいおばさんだけなので比較対象は無いが。


 そしてご飯を食べて水浴びしてぐっすりと眠る。ちなみに、もう一緒には水浴びはしない。けど、背中だけは流して貰ってる。貧しくて何にも無いけど幸せなこの時がいつまでも続いて行くと僕は思っていた。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 ある日、家への帰路、道に新しい轍と馬の蹄鉄の跡を見つけた。馬車が通ったのだろうけど、僕達の村には何も無い。しかも家は村の外れにあるから、もし誰か来ても素通りするだろうと気にはしなかった。


 バタンッ!


 家に帰りご飯を食べてると急に家の扉が弾け飛んだ。


「おおっ、こいつが『収納の持ち』か?掻っ攫うぞ」


 頭の髪の毛の真ん中だけ残した凶悪な顔をした男が部屋になだれ込んでくる。皮の鎧に棍棒を手にしている。そしてその後ろからさらに2人屈強な武装した男達が。


 僕は一瞬何が起こったのかが解らなかったが、立ち上がり妹の手を掴み部屋の窓から逃げようとする。


「逃がさねーぜ」


 ドゴッ!


 背中に痛みが走る。そして僕は地に倒れる。棍棒を投げつけられたのか?僕は妹を突き飛ばす。


「ティタ!逃げろ!」


 僕は声を振り絞った。

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