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 ゼロレンジバトル


「よく、格闘技を極めたものが、街で喧嘩してゴロツキとかにやられてしまうという事があります」


 エルフのデルが口を開く。その声は澄んでいてまるで詩でもそらんじているみたいだ。けど話しているのは格闘についてで、着ている服は無骨な道着だ。腰に巻いている黒帯はすり減って布地の端々は白っぽくなっていて、それを着てどれだけ研鑽してきたかを物語っている。

 僕達も道着を着て大地に正座している。ちなみに話を聞いてるだけで、決して何か悪い事して反省してる訳ではない。


 今日のデル先生の格闘術講座は森の中だ。下草が少し生えている樹高の高い木々の下に僕達はいる。日の差し込む所はほぼなく夏なのにひんやりしてて空気もよく心地よい。今いる所は開けているが木々は密集してて戦うには邪魔になりそうだ。

 今日もいつメン、僕、マイ、ドラゴンの化身アンとマッスル黒エルフのレリーフ、子供族のパムだ。

 パム以外は腰の帯は黒色だ。アンもレリーフも見事に昇段した。


「パムはまだですが、皆さんは黒帯、森人格闘術エルフアーツを学んだ者として一人前になりました。今後は道場の看板を背負う事になりますので、それにふさわしい実力と戦い方を身につけてもらいます」


 僕達は頷く。みんな高レベルの冒険者ではあるが、強い高名な冒険者が酒場の乱闘で喧嘩して怪我したり命を落としたとか言う話を聞くこともある。慢心してはいけない。


「それで、話を戻しますが、格闘術でだいたい教えるのは近接戦闘です。間合い次第では実力を発揮できなくなる事もあります。言うよりも見たが早いですので、ザップ兄さん少し手合わせお願いします」


 デルが立ち上がり、僕も立ち上がる。


 その瞬間僕の目と鼻の先にデルの顔が!


 一気に距離を詰めてきた。ボディブローを放つがさらにデルが近づいてきてお腹に触れるだけになる。デルの手が動いたと思った瞬間僕の頭はカチ上げられて視界が歪む。両足に何か柔らかいものが抱きついてくる。諸手刈りかっ?バランスを崩すが両足に爆発的な力を込めて跳ぶ。デルの体からなんとか逃げ出すが、跳んだ先の木にぶち当たる。なんとか体を捻り着地して追撃を警戒するがそれは無かった。


「ザップ兄さんありがとうございます」


 デルが頭を下げ、手合わせの終わりを悟り構えを解き歩いて戻る。


「さすが強すぎです。お腹ひどい事に…」


 デルは道着をはだけて、下に着てるシャツを捲ってお腹を出す。触れただけだと思ったのに拳の形に青あざが…

 それよりも僕達男性陣の目線はその上に釘付けになる。デルの胸は小振りでその形がよく分かる。そう、ブラジャーしてないんだ。


 マイがエリクサーでデルを癒し離れた時にはシャツにくっきりブラジャーの線が。チッ、マイ、気付いたのか…


「ザップ兄さんの強さは皆さんご存知だと思いますが、私でも今みたいにゼロ距離だと戦えます。冒険者は武器で魔物と戦うのに長け、格闘家は手足の届く範囲での戦いに長けてます。それに比べて喧嘩なれしたゴロツキとか熟練の暗殺者とかは、街中とかの密集した所で戦う事が多く、経験則でゼロ距離戦闘に長けてます」


 デルはここで一旦話を切り僕らを見渡す。ゼロ距離戦闘に関しての意見を求めてるのだろう。


「解ったわ、槍で剣とかと戦ってる時みたいに、近づけば近づくほどリーチが短い方が有利になるのね」


 マイが手を上げる。そっか僕のボディブローは手が伸びきった時に最大威力を発揮する。距離詰められたからか。


「はい、ゼロ距離では手足の体から近い所を使ったリーチが短い攻撃が有利になります」


 デルはその場で、肘打ち、膝蹴り、頭突きを披露する。


「なぜ、格闘術でこれらを余り教えないかと言うと、威力が高くて危険だからです。補足でボディブローはゼロ距離では肘を垂直に固定して放つと威力が乗ります」


 デルがそれも実演する。ガッツポーズみたいだ。


「それでは、皆さん木々の間でゼロ距離戦闘の練習をしましょう」


 マイとアン、デルとパムが木々に連れ立って行く。という事は……



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